箱根駅伝4連覇中の青学大・原晋監督(51)が「舞台デビュー」を果たす。1964年東京オリンピック(五輪)男子マラソン銅メダルの円谷幸吉氏(享年27)と1968年メキシコ五輪銀メダルの君原健二氏(77)を描いた舞台「光より前に~夜明けの走者たち~」(11月14日初日、東京・紀伊国屋ホール、同29日初日、大阪・ABCホール)の特別監修を務めることが4日までに決まった。

東京五輪まであと2年を切った今、54年前の前回東京五輪時に起きた激動のドラマが、舞台化される。円谷と君原。1歳違いの2人はライバルであり親友だった。

64年東京五輪で銅メダルを獲得した円谷は、金メダルが期待された68年メキシコ五輪の9カ月前、「もうすっかり疲れ切ってしまって走れません-」との遺書を残して自殺した。東京五輪でメダルどころか入賞も逃した君原は一時は引退決意も奮起。ライバルの自殺にショックを受けながらもメキシコ五輪で銀メダルを獲得する。2年前までフルマラソンに出場するなど、77歳になった今も走り続ける。対照的な人生を歩んだ2人の生き様が舞台で描かれる。

特別監修を務める原監督は長距離ランナーの競技に向かう姿勢、心構えなどを、演出家、キャストに伝えていくという。

原監督 孤独なスポーツだが、周りには、苦しいときに支えてくれる仲間、支援者がいる。だからこそ1人きりで走ることができる。そこは伝えたい。

円谷のコーチ、畠野洋夫役として、TBSドラマ「陸王」にも出演した和田正人(39)が起用された。日大時代は箱根駅伝に2度出場した経験を持つランナーだけに、今回の舞台への思いは強い。

和田 孤独は大きなテーマになると思う。円谷さんと君原さんは対照的な2人。ともに栄光を手にしているが、何が違ったのか。そこがポイントになる。ただ走るというシンプルな競技。なせ走るのか。答えは1つではないし、観客にも考えてもらいたい。そこに何か生きていく上でのメッセージに気付いてもらえば。

試行錯誤を乗り越えて42・195キロを走るマラソンはよく人生にたとえられる。原監督は「サラリーマン、子育てで苦労するお父さん、お母さん、これから社会に出る学生と、たくさんの人に“明日から頑張ろう”と思える。今回の作品から勇気と元気を、和田さんを含めたキャストのみなさんが届けてくれる」と期待を込めた。

特別監修を務める原監督だが、一方で本業の駅伝シーズンは、8日の出雲全日本大学選抜駅伝(午後1時5分号砲、6区間45・1キロ)で開幕する。今季の青山学院大は例年通り順調に調整を進める。「出雲で勝つことができれば(全日本、箱根を合わせた)3冠を取れる」と自信を漂わす。2シーズンぶりの3冠で、箱根駅伝5連覇。原監督は特別監修を務めた舞台に続き、本業の駅伝でも、勇気と元気を与える決意だ。

※出演者(役)は以下の通り

宮崎秋人(円谷幸吉)木村了(君原健二)中村まこと(加藤記者)高橋光臣(君原コーチ=高橋進)和田正人(円谷コーチ=畠野洋夫)