宮城県石巻市出身のスプリンター、筑波大・三浦由奈(1年=柴田)の止まっていた時計の針が再び動き始めた。約10カ月ぶりのレースとなった8月22日の同県陸上競技選手権では、女子100メートルを12秒06(向かい風0・1メートル)で優勝。さらに翌週のナイトゲームズ・イン福井では、同種目で11秒67(追い風1・1メートル)と記録を伸ばし4位に入った。11日開幕の日本学生陸上競技対校選手権(日本インカレ)、10月の日本選手権(ともに新潟開催)へ追い風が吹いている。

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再起戦は上々だった。三浦は県選手権の予選と決勝を走り終え、思わず笑みを浮かべた。「始まりが宮城で頑張ろうという気持ちで、タイムもそれなりに出た」。決勝は昨夏の全国高校総体で男子100メートル、200メートルを制した築館(宮城)鵜沢飛羽(3年)の妹で、三浦に憧れ柴田に進んだ希妃(1年)と隣のレーン。「(高校で)かぶってないけど後輩と一緒に走れてうれしい」と刺激を受けた。

コロナ禍で一時は自分を見失った。今春の筑波大入学後、大学拠点の茨城に行けず6月ごろまでは地元石巻で調整。茨城入り後も公園で練習するなど満足に練習が積めない日々で「不安がすごかった」といい、「自粛期間に走りが分からなくなった」と苦悩した。

それでも逆境を力に変えた。「今まで感覚で走ることが多かったが、それでは伸びない」。以前は習慣になかった自分の走る動画を見て接地などを特に意識。研究効果もあり「感覚でなく考えて走れるようになった」と手応えを示す。

インカレは1年生ながら大学生ランキング2位の100メートル、200メートルに出場。「決勝に進出して優勝争いしたい」と語り、同じく2種目出場を目指す日本選手権は「周りに惑わされないで自分の走りをして、順位にこだわらず結果1位を取れたら」と無欲で挑む。

宮城の陸上史にその名を刻んできた。100メートルで県内中1記録の歴代3位、同中2、同中3では歴代1位をマーク。昨年は100メートル11秒60、200メートル24秒08とそれぞれ自己ベストを更新し、県高校記録も塗り替えた。大学では日本を代表する最強スプリンターへ新たな扉を開く。【山田愛斗】

◆三浦由奈(みうら・ゆな)2002年(平14)3月3日生まれ、宮城県石巻市出身。稲井中-柴田-筑波大。18年の福井国体では少年女子A100メートルで優勝。3年連続で全国高校総体に出場し、昨年は女子100メートルで3位。家族は両親と兄。159センチ。