世界競歩チーム選手権(3月4、5日=オマーン)の20キロ競歩に中越高出身の諏方元郁(22=愛知製鋼)が出場する。日本代表としてのレースは初体験だ。高校卒業後は地元で競技を続けていたが、21年1月に愛知製鋼入り。東京オリンピック(五輪)20キロ競歩の銅メダリスト山西利和(25)らが所属する強豪チームで、24年パリ五輪を視野に入れている。

諏方は24年パリ五輪に向かって歩き始めていた。日の丸を初めてつける世界競歩チーム選手権を、大きな1歩にする決意だ。「世界レベルの大会は、いい経験になる。その空気を肌で感じたい」。大会のメインは出場3選手の各成績が順位に反映されるチーム戦。20キロ競歩でチームを組む2選手は東京五輪の同種目メダリストだけに強い重圧がかかる。愛知製鋼の先輩・山西が銅で、池田向希(23=旭化成)は銀だ。「自分が遅いと総合順位が低くなる。着実、確実を心掛けたい」と言った。

昨年1月に愛知製鋼入りしてから練習環境は急変した。高校卒業後は地元に残り、「中越よつば森林組合」所属で大会出場。U-23強化指定選手だったが、練習はたった1人で繰り返してきた。ところが愛知製鋼には競歩の東京五輪代表が2人いる。山西と、50キロ競歩の丸尾知司(30)。刺激いっぱいの環境だ。「山西さんは自分の動きを細かく分析する力がある。丸尾さんはフィジカルが強い。タイプの違う2人から毎日、勉強することばかり」。先輩たちの長所を“いいとこ取り”で吸収する。

愛知製鋼陸上部は21日まで東京で合宿を張る。合宿の疲労度が強ければ出場を見合わせるが、20日の日本選手権20キロ競歩(神戸市)にもエントリーしている。高校3年4月から競歩を始め、卒業直前のU-20選抜競歩大会10キロ(18年2月)で3位に入った逸材。埋もれかけていた才能を愛知製鋼で大きく開花させるつもりだ。「まだ世界に挑戦できるレベルではない」と諏方は話したものの、気持ちは世界に向かってまっしぐら。「目指すべきはパリ五輪」と口調は力強かった。【涌井幹雄】

◆諏方元郁(すわ・もとふみ)1999年(平11)10月22日生まれ、長岡市出身。陸上は宮内中1年から始める。石坂小では野球に取り組んでいた。中越高3年時にキャリア約4カ月でインターハイ5000メートル競歩で決勝進出。中越よつば森林組合を経て、21年1月に愛知製鋼に入社。昨年は中部実業団5000メートル競歩で優勝。1月1日の元旦競歩大会20キロで3位。170センチ、56キロ。血液型A。

◆第29回世界競歩チーム選手権 3月4、5日にオマーン・マスカットで開催される。男子20キロ、35キロ、女子20キロなどが行われる。各国最大5人まで出場可能。フィニッシュした各国上位3人の個人順位ポイントで順位を争う。日本からは男子20キロ、35キロに各3人、女子20キロに1人が出場する。