パリ・オリンピック(五輪)代表選考「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」が15日に開催される。

男女が同じコースを走って、それぞれ上位2人がパリ五輪切符をつかむ。04年アテネ五輪金メダリスト野口みずき氏(45)が、6度の折り返し、最後の上り坂など、タフなコースの特徴を解説した。【取材・構成=益田一弘】

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MGCは、周回する部分を含めて、折り返しが6度ある。減速と加速が必要で足に負担がかかる。6度も続けば、肉体的、精神的に相当削られるだろう。20キロ付近のカーブ→折り返し→カーブが続く場面も混み合って、リズムがとりにくかもしれない。そして本当の勝負は、37キロから約3キロにわたる長い上り坂。ここがパリへの分かれ目になる。どんなに調子がいい選手でも絶対きつくなるだろう。

タフなコース設定だが「嫌だな」とネガティブに捉えてはいけない。五輪本番でも、アフリカ勢が細かくペースを上げ下げして、足に負担がかかってくる。私は03年に世界選手権でパリを走ったが(銀メダル獲得)石畳や小刻みなカーブがあったと記憶する。パリのコースが、日本のようにきれいに舗装されたアスファルトとは限らない。足元をしっかり鍛える練習、下地作りは必要になる。五輪を想定した代表選考と捉えれば、いいコースといえる。

MGCはタイムではなく、勝負優先のレース。集団の中段、後方にいるなど駆け引きもあるが、勝ちたいならば前方に位置するべき。先頭の飛び出しやペース変化に対し、反射的に動ける位置にいること。怖がらずに勇気を持って前方で走ることが、本番での活躍にもつながる。心身ともに消耗した中で「パリに行くんだ」という覚悟を持って最後の坂でぐっと伸びてくる。そんなハートがこもった走りに期待したい。

女子の注目選手は、前回優勝の前田穂南。万全の状態であれば、レースの軸になる。経験豊富な安藤友香は、どしっとして気持ちが強い。そこに鈴木亜由子、細田あいが加わってくるだろう。大本命という選手はおらず、混戦が予想される。

9月のベルリンマラソンでは、アセファ(エチオピア)が世界新記録の2時間11分53秒を出した。速さ=タイムは、やはり強さにつながってくる。世界との差が広がる中で、MGCが終わった後には、まず誰かが日本記録(2時間19分12秒、野口みずき)を破って2時間17、18分台を出していくこと。それが世界と戦うスタートラインになるだろう。(04年アテネ五輪金メダリスト)

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