<陸上:日本学生対校選手権>◇3日目◇11日◇東京・国立競技場

 男子400メートルはロンドン五輪1600メートルリレー代表だった中野弘幸(愛知教大院2年)が46秒55で優勝した。日本選手権などは前半で遅れても後半で追い上げる展開だったが、学生の大会ということもあり300メートルではすでにトップ。最後の直線も首を振る独特のフォームで押し切った。「予選、準決勝と調子が上がらなかったので、タイムよりも勝ちにこだわりました。200メートルで離されていなかったのでイケルと思った」

 見た目はスマートなフォームではないが、独自の走理論やトレーニング論を自身のフェイスブックで公開している頭脳派ランナー。その一方で、ロンドン五輪では「子どもたちに夢を与えるために走った」と、思いの強さを走りに込めてきた。「この大会は後輩たちに“来年以降はオマエたちが愛知教大を背負って行くんだぞ”、というメッセージにしたかった。だから負けられませんでした」

 中野自身は来年以降、教員採用試験に合格すれば教師の道を歩き始める。「未来を担う仕事ですから、そちらがメインになるでしょう。教師をやりながら400メートルをやるのは無理と言われています。でも、不可能と言われることに挑戦するのも子どもたちに夢を与えることになる」

 まったく実績のなかった高校時代から6年間でオリンピック選手に成長。無名選手たちに夢を与えた中野の挑戦が、形を変えて続いていく。