国際サーフィン連盟(ISA)が主催する「ISA ワールド・サーフィン・ゲームス(World Surfing Games)」が5月20日から5月28日まで、フランスのビアリッツで行われた。つまり、サーフィンの世界選手権だ。日本サーフィン連盟(NSA)から日本代表選手が6名派遣された。ISAは「オリンピック・スタイル」と呼ばれ、国別対抗の戦いがある。選手としてもチームで戦うというモチベーションも持てる試合だろう。

 彼らの愛称は「波乗りジャパン」

 団体戦は、今までで最高位の5位だった。NSAとしてもポジティブな結果だった。

サーフィン強化指定選手国内強化合宿に参加した田中大貴(写真は2017年3月18日)
サーフィン強化指定選手国内強化合宿に参加した田中大貴(写真は2017年3月18日)

 この世界選手権は「ワールド・クオリファイング・シリーズ(World Qualifying Series=QS)のポイントが付かない試合だ。QSには1000から10000ポイントまであり、QS1000やQS10000と呼ばれる試合になる。サーファーはポイントを稼ぐためにQSの試合に出場し、世界を回る。さらにQSでのポイントを稼ぎ、トップの選手が出場できる試合が「チャンピオンシップ・ツアー(CT)」だ。現在は世界で34名いる。このCT選手になるために、QS試合を重ねる。

 日本人で勢いのある選手として忘れては行けないのが、2015年に大原洋人選手がQS10000のUSオープンで優勝し、一気に飛躍したのは記憶に新しい。その他のQSの試合でもポイントを稼ぎ、現在ではQSランキングは2位となっており目が話せない。

 またQS試合と異なるのが、先日まで行われていたISA世界サーフィン・ゲームスだ。この試合はQSのポイントは稼げない。しかし、この試合を選びチャレンジした選手がいる。福岡出身の18才、田中大貴選手だ。昨年のケガでしばらく試合に出場できなかったが、オリンピック強化選手にも選出された。謙虚であり、意欲的な選手だ。

 3月に高校を卒業。高校生活はほとんどサーフィン。もちろん、プロサーファーであるため世界を回り、登校できない日が多かっただろう。それだけに「先生や友人に感謝している」「なんと言っても、高校がサーフィンをスポーツだと認めてくれサポートしてくれたことに心から感謝している」。高校時代の話をするときは、周囲への感謝の気持ちを忘れない。

 卒業後はハワイへ渡り「最高の環境でサーフィンをやらせてもらった」。プロサーファーとしてトップに君臨し、今はコーチとして活動する糟谷修自さんのところでお世話になった。

サーフィンの強化合宿で豪快にターンする田中大貴(写真は2015年6月28日)
サーフィンの強化合宿で豪快にターンする田中大貴(写真は2015年6月28日)

 「ISAを選んだ理由は、CT選手と試合ができるから」

 今までは世界ISAにCT選手は出場できなかったが、東京五輪の新種目になったことで、出場出来ることになっていた。少しずつ、東京五輪の影響でシステムが変わりつつあるということだろう。

 今回出場したCT選手は、フランスのジョアン・ドゥル選手とブラジルのジェレミー・フローレス選手だ。

 「ジェレミーと対戦できる組み合わせになった時は、すごく楽しみでワクワクが止まらなかった。波をとるために左右の動きが素早くて、止まらずにパドルし波を追いかけていくところがすごかった」。そう田中選手が言うようにCT選手は波をつかむスピードに長けている。

 「パワー、スピード、フロー、全てにインパクトがあり印象的だった」

 結果は、17位。ラウンド4までだった。あと少しでベスト16位。

 「絶対オリンピックに行きたいです」

 田中選手は常に世界を見ている。これからはQSの試合を回ってポイントを稼ぐ。QSの試合で優勝することを目標に、今も南アフリカの地で自然を感じていることだろう。まぶしい「大貴スマイル」を見られる日もそう遠くはない。

(伊藤華英=北京、ロンドン五輪競泳代表)