国が変わればサッカーも変わるのだ。24年ぶりに準々決勝に進出したスウェーデンの戦いぶりを見て思った。北欧の大男たちがゴール前を堅める伝統の堅守速攻。決勝トーナメント1回戦も城門に人垣を築いてスイスの進攻をはね返し、1点を死守した。ボール支配率はわずか36%。武骨で花はないが、なかなか強い。

 同じ戦い方を日本がしたら「消極的」と批判を浴びるだろう。「日本には守備の文化がない」と言ったのは02年W杯で日本を率いたトルシエ監督。自慢の守備戦術『フラット3』で強敵を無失点に抑えて引き分けても「決定力不足」と批判された。「0-0は悪い試合と非難され、8-8は素晴らしいと称賛される。日本はゴールばかりに目が注がれる」と嘆いた。

 93年に創設されたJリーグは当初『延長Vゴール』という独自の方式を採用した。当時の川淵三郎チェアマンは「決着をつけるのが日本人の文化」とコメントした。96年アトランタ五輪で日本は徹底した守備でブラジルから1ー0の歴史的勝利を挙げたが「守備的なサッカーに未来はない」と、日本協会が下した西野朗監督の評価は低かった。

 この思考は日本人の気質に起因しているのかもしれない。古来『大和魂』は“及び腰”を恥とし、“潔く、勇敢に”を善しとする。今も“強敵にもひるまず勝負を挑む”というメンタルを日本人は好む。メディアもゴールを決めたエースに焦点を当てる傾向が強く、守備の立役者が脚光を浴びる確率はずっと低い。

 22年前のアンチテーゼだろうか。今大会の西野監督は攻撃的な采配を貫いた。ベルギー戦は2点先制した後もファイティングポーズを崩さなかった。サッカーに「たら」は禁句だが、2点リードした時点で防御に転じていたら、日本に守備の文化が根付いていたら、あの美しき敗北と引き換えに、堅実なる勝利を手にしていたのかもしれない。

 決勝トーナメント1回戦で、開催国ロシアが献身的な守備で優勝候補スペインの猛攻に耐え、PK戦の末に番狂わせを起こした。W杯という格上相手の長丁場を完走するには、時に守りに徹することも必要なのだ。日本人には忍耐強くて献身的な気質もある。守備的な戦いも決して不得手ではないはずだ。【首藤正徳】

日本対ベルギー ベルギーに敗れぼうぜんとする日本代表西野朗監督(中央)(2018年7月2日撮影)
日本対ベルギー ベルギーに敗れぼうぜんとする日本代表西野朗監督(中央)(2018年7月2日撮影)