東京オリンピックで日本選手の活躍が連日続いている。トライアスロン競技も26日に個人男子、27日に個人女子が終了した。

トライアスロンは自然との闘いでもある。男子のレースは、気温はそこまで高くなかったものの、日本独特の湿度で海外選手はやや苦戦していたようにみえた。女子のレースは打って変わって、台風の影響による悪天候の中での非常にタフなレースとなった。

男子で日本勢最高の14位となり、ガッツポーズするニナー賢治(共同)
男子で日本勢最高の14位となり、ガッツポーズするニナー賢治(共同)

男子の日本勢はニナー賢治(28=NTT東日本・NTT西日本)が14位。小田倉真(28=三井住友海上)が19位だった。ニナーはスイムから非常に良い位置で展開し、最後のランでも粘った。私が今までみた彼のレースの中で1番良いレース展開、走りだったように感じた。

小田倉はスイムでやや遅れたが、一緒にスイムをあがった選手の中にバイクの強い選手が多く、最終的にはほとんどの選手がひとつの集団となりランへ。得意のランで実力を発揮し、順位を上げた。

金メダルを獲得したのは、前評判の高かったノルウェーのクリスティアン・ブルメンフェルト(27)。彼はどんな時でも決して諦めず、最後まで自分の力を100%出し切れる。人柄も良く、ライバルにも愛される選手だ。

実は日本男子勢はノルウェーと合同練習を行う関係だ。日本代表のパトリック・ケリー・コーチが躍進するノルウェーにアプローチ。2018年12月ごろから、ノルウェー式のトレーニングを用いて力をつけてきた。宮崎で直前合同合宿も行っている。

合宿に参加していた日本選手は「ブルメンフェルトやイデン(今大会8位)は人柄がすてき。とにかくいつも明るくて、トライアスロンを楽しんでいる。プラス、めちゃくちゃ練習熱心」と話していたという。

頂点に立ったノルウェーから、日本はさらに学ぶこともあるのではないか。今後も高みを目指し、世界の強豪と戦ってほしい。


男子日本代表とノルウェー代表の合同合宿
男子日本代表とノルウェー代表の合同合宿

女子は、高橋侑子(29=富士通)が粘りの18位。岸本新菜(25=福井県スポーツ協会・稲毛インター)は途中棄権だった。

高橋はスイムを好位置の10番手であがり、実力者のそろう第2集団でバイクを展開した。非常に天候が悪く、見ているこちらもハラハラするようなレースだったが、彼女は落ち着いていて、貫禄さえ感じた。フィニッシュ後のやり切った表情がすてきだった。

岸本はバイクで落車してしまった。「悔しさと申し訳ない気持ちでいっぱい」と言っていたが、この舞台に立てた経験と悔しさを今後にぶつけてほしい。

女子の優勝はバミューダ諸島のフローラ・ダフィー(33)だった。全競技を通じてバミューダ初の金メダリストとなった。彼女はリオ五輪でもスイム、バイクは非常に強かった。しかし、バイクで足を使い過ぎて、ランまでもたないという課題があった。それをここ数年で克服し、今回は圧巻の走りを見せた。ラン10キロのタイムは33分00秒。トライアスロンは折り返しがあったりするので、実際には32分30秒前後に相当する速さだ。4度目のオリンピックだが、北京大会後に一度競技を離れている。摂食障害などのつらい時期を克服して、また復帰してきた。そんな経験が素晴らしい人柄につながっているのだろう。


男女どちらのレースもフィニッシュ後、互いにたたえ合うシーンにはとても感動した。その姿を見てあらためて感じたのは、スポーツは勝敗だけじゃない、その競技がもたらす喜びや苦悩が人間性を育むのだということだ。引退して振り返ると、喜びや達成感、悔しさや苦悩は、何ものにも変え難い私の財産となっている。

トライアスロンは31日に最終種目の混合リレーが行われる。スピーディーな展開でとても見応えのある新種目。私を成長させてくれたこの競技の新たな歴史が始まることに、とてもワクワクしている。

(加藤友里恵=リオデジャネイロ五輪トライアスロン代表)