平昌五輪カーリング女子銅メダルのLS北見スキップ藤沢五月(26)は2月27日に、故郷の北海道・北見に戻った。出迎えに感激して「実は…。絶対にカーリングで日本初のメダリストになってやるという夢がかなった」と言った。初五輪で日本勢初メダルは、世の中にサプライズを与えたが、世界との差を見つめて歩んできた道だった。

 14年ソチ五輪。下馬評有利の中、日本代表決定戦で北海道銀行に敗れた。日刊スポーツは当時、北海道銀行のソチ五輪を見た藤沢に観戦記を寄せてもらっている。14年2月16日付で、北海道銀行が世界ランク2位カナダに8-6で惜敗。通算2勝4敗となった時のものだ。4年前の「藤沢五月観戦記」を再録する。

 藤沢五月観戦記 結果的には負けてしまったけれど、カーリングの面白さが詰まった楽しい試合でした。日本(北海道銀行)はいいショットも決めていたし、スチールもした。中盤までは「勝てるんじゃないか」とも思いました。ただ、カナダは強かった。さすがに、カーリング大国ですね。

 実は、五輪に出るぐらいのチームになると、技術力は大差ないんです。違うのは精神力ですね。試合は日本の流れだったけれど、カナダのメンタルが崩れることはなかった。表情にも余裕がありました。「絶対に勝てる」という自信があったのでしょう。日本は第5エンドでスチールして押せ押せムードでしたが、第7エンドに2点を奪われて流れが変わったんです。

 「五輪で勝つより国内で勝つ方が大変」と言われるほど、カナダは強いチームが多い。私は今回出ている(スキップ)ジョーンズのチームが好きなんです。ハウスにストーンをため、一気に大量点を奪うスタイル。リスクもあるけれど、攻撃型で男子のようなカーリング。見ていて、面白いんです。それでも、ジョーンズは今回が五輪初出場でした。それほど層が厚い。レベルが高いということなんです。

 そんなカナダとこれだけの試合をしたんです。日本は素晴らしかったと思います。初戦で韓国に負けた時は緊張なんだろうと思いましたが、その後は普段通りにやっています。英国(スキップミュアヘッド)戦は大敗したけれど、内容は点差ほど悪くないと感じました。

 この後も強豪との試合が続きます。正直、準決勝進出はかなり厳しくなったと思いますが、最後まで精神的に切れずに頑張ってほしい。多くの人がテレビで応援しています。負けてもカナダ戦のような試合をすれば、カーリングの魅力は十分に伝わると思うんです。(中部電力スキップ)

 藤沢は、観戦記を寄せた1年3カ月後にLS北見に加入している。代表の座を争った北海道銀行はソチ五輪4勝5敗で、日本勢最高の5位(当時)に入った。あと1勝で準決勝進出がみえる健闘だった。その姿を見て、負けず嫌いの藤沢は「私も」と思い、そして自分の攻撃的なカーリングが五輪で通じる、と自信を深めたことだろう。

 藤沢は、ソチ五輪について「当時はその力がなかったということだと思っています」と振り返る。ただ悔しさをかみしめながら見たソチ五輪が糧となり、銅メダルにつながったことは間違いない。【益田一弘】