「バーチャル・マラソン」をご存じだろうか。

新型コロナウイルス感染拡大で、マラソンイベントは軒並み中止。ランナーたちは孤独な走りを続ける。そんな中で、5月末の仮想大会になんと1万7000人以上がエントリーした。

大会の主催は、1976年(昭51)創刊の雑誌「ランナーズ」を発行するアールビーズ社。大会は5月29日午前0時~6月7日午後23時59分までの10日間。「10日間で100キロ走破」「1人RUNだけど、独りRUNじゃない」をコンセプトに、全国どこからでも、誰でも、無料で参加できる。参加者は、同社サイト「RUNNET」で登録して、専用のアプリを載せたスマホ、スマートウオッチを身につけて走る。1人1人はソーシャル・ディスタンスを守って個別に走るが、ランキングによって、他のランナーと一体感を感じられる仕組みだ。同大会はタイムではなく、走行距離にフォーカスしている。

関係者は、参加人数について「過去の例から5000人ぐらいを予想していた」という。だがふたをあけてみれば、登録初日でいきなり8000人、最初の3日間で1万3000人を超えた。国内の大規模大会と遜色ないレベルに達して、同関係者は「かなり多いです。やはりコロナで、大会が中止になっている影響があると思います」と驚いている。参加登録は、大会期間中も受け付けている。

各ランナーの走行距離は、1時間ごとに最新ランキングが発表される。合計で100キロを走破したランナーには抽選で12月の沖縄100キロウルトラマラソンの出走権があたる。ほかにも特別協賛の「ザムスト」がプレゼントを提供する。同社は、ランニング愛好者になじみが深いサポーターなどを販売している。

政府による緊急事態宣言は25日に全面解除されたが、日常が戻ってくるにはまだまだ時間がかかるだろう。ランナーにとっても、孤独な走りが続くことが予想される。ただコロナ禍の中で、今後は新しいスポーツの楽しみ方も広がっていくだろう。【益田一弘】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)

◆益田一弘(ますだ・かずひろ)広島市出身、00年入社の44歳。五輪は14年ソチでフィギュアスケート、16年リオで陸上、18年平昌でカーリングなどを取材。16年11月から水泳担当。