バスケットボール男子日本代表が13日から2日間、強化試合として仙台市でイランと対戦する。若手のホープ河村勇輝(21=B1横浜ビー・コルセアーズ)は先月のW杯アジア1次予選、そして直後に開催されたアジア杯に続き、今月も再び招集された。

念願の日本代表デビューを果たしたW杯予選の台湾戦(7月3日)では、わずか約14分の出場で8アシスト5スティールをマーク。シュート機会がなく得点は挙げられなかったものの、攻守で鮮烈な印象を残した。

福岡第一高時代の恩師にあたる井手口孝監督によれば、その代表デビュー戦直後、祝福を伝えるメールの中で次のようなやりとりが交わされた。

井手口 でも無得点だったか。シュートを打っても良かったんじゃないか。

河村 先生に教わったとおりのことをしたからです。

先生に教わったこと-。その意味について後日、河村に直接尋ねると、こんな言葉が返ってきた。

河村 速攻を仕掛けたとき、自分が打っても別の選手が打っても同じ確率で点が取れるシチュエーションでは、僕はパスを選択してしまう癖がある。それは井手口先生に『走ってくれる仲間がいることを忘れてはいけない』と教えられたから。一緒に走ってくれたチームメートをリスペクトし、最後はボールを渡す。どちらでも決められる状況のときには、そうする癖がついているんです。

「癖」という言葉を繰り返した河村に「それは『ポリシー』とも言い換えられるのでは」と問いかけると、にっこりうなずいた。「そうですね。僕のポリシーです」

直後のアジア杯では1次リーグ初戦のカザフスタン戦(7月14日)で日本代表初得点を刻むなど、約13分間で8得点8アシスト。NBAプレーヤーの渡辺雄太に「MVPは彼」と言わしめた。恩師とのメールのやりとりを受けて、河村が改めて強くしたのが「次に点を決めるチャンスがあったら、しっかり狙いにいこう」という思いだったという。その誓いを、すかさず体現した。

大会全5試合を通じても1試合平均4.4得点、4.4アシストと奮闘。早くも日本代表に欠かせない存在となりつつある。

アジア杯後はドリブルでのアタックや外角シュート、味方へのパスなど、「瞬時の判断を意識」して日々の練習に取り組んでいる。司令塔として仲間を最大限に生かすことを大切にしつつ、自ら積極的に行く姿勢も忘れない。伸び盛りの21歳は2年後のパリ五輪に向けて、さらに成長を遂げていく。【奥岡幹浩】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「We Love Sports」)

◆河村勇輝(かわむら・ゆうき) 2001年(平13)5月2日生まれ、山口県出身。福岡第一高時代にウインターカップ2連覇。直後の20年1月に特別指定選手としてBリーグ三遠に加わり、当時のB1最年少出場記録や最年少得点記録を更新した。東海大進学後には同制度で横浜BCでもプレー。21年春に大学を中退し、今季から完全なプロとして横浜BCに所属する。尊敬する人物は元プロ野球選手で米大リーグでも活躍したイチロー。身長172センチ。

2021年12月25日の琉球戦、試合前に青いサンタクロースの帽子をかぶり登場する横浜BC河村(左)
2021年12月25日の琉球戦、試合前に青いサンタクロースの帽子をかぶり登場する横浜BC河村(左)
B1横浜BCとプロ選手契約したことを発表しガッツポーズするPG河村=2022年3月3日
B1横浜BCとプロ選手契約したことを発表しガッツポーズするPG河村=2022年3月3日