男子ゴルフのレジェンド、尾崎将司(75)を取材する機会に恵まれた。ツアー出場から遠ざかって約3年だが、オーラは“健在”。何とも言えない存在感を感じた。

先日、毎年恒例のジュニア育成を目的にしたセレクションを開催した。プロを目指す中高生ゴルファーらが集まった。場所は所有する千葉市内の練習場。まず、少し離れたところで運転するカートを止めた。ハンドルにもたれて、ジュニアのスイングをじっとチェック。その目は鋭かった。

米ツアー中継はたまに見る。「J・スピースどうなってるのかなとかね」。一方、国内ツアーのテレビ中継はほとんど見ない。「国内の選手は男女問わずあまり知らないけど、ウチの子たちが優勝争いしていたら見る」。原英莉花ら愛弟子の活躍を楽しみにしている。親心をにじませた。

暮らしはマイペースそのものだった。この1年の変化を聞かれると「まったくなし」と即答。さらに「24時間同じように過ごしている。午後9時20分に寝る。この時間が来るのが楽しみ」と続けた。取材時は2月。「3月くらいから、少しずつ体を動かそうかと思う」。さらに「腰の状態も良くないね。コロナで一服だよ。終結が見えたらだね」などと、状況を様子見しているとした。

健康の秘訣(ひけつ)に話が及ぶと「コロナがあるから、千葉から出たことがない。まぁ、ワンちゃんと一緒に過ごすことだね」。コロナ対策の大原則とされる不要不急の外出自粛を守っているようだった。愛犬と散歩にいそしんでいるのかと思いきや、少し違った。「散歩はいらない。放し飼いだから」。のんびり日々を過ごしている姿が容易に浮かんだ。

最近の趣味に「大工仕事」を挙げた。「台を作ったり、トレーニング器具をなおしたり。何かしなきゃ時間がつぶれないよ」と、冗談交じりに明かした。

コロナ収束の見通しが立たない現状に逆らわず、健康的な生活を送る。その一方で、試合に出ていなくても、ゴルフから離れていない。穏やかな表情で言った。「結構、エンジョイしてる」。個人的にはこの言葉が印象に残っている。【近藤由美子】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)

セレクション受験者のスイングを細かくチェックする尾崎将司(2021年2月27日撮影)
セレクション受験者のスイングを細かくチェックする尾崎将司(2021年2月27日撮影)