プロ9年目の大槻智春(29=真清創設)が、天国の兄に捧ぐツアー初優勝を飾った。首位と3打差4位から出て65で回り、星野陸也(23=フリー)とのプレーオフ(PO)に突入。激闘の末に、PO4ホール目でバーディーを奪って決着をつけた。

89年に、ゴルフをしていた小学5年の兄智之さんが脳腫瘍で他界。どん底にいた両親は、翌90年に第3子となる男児を授かった。茨城県内で肉屋を営む父隆さん(70)は「このままでは、いつまでも家族が暗いまま。『最初からやり直そう』と、かみさんに頼み込んだんです」。生まれた子は、亡くなった長男から1字をとり、智春と名付けた。兄と同じく7歳からクラブを握らせ、晴れの日も、雨の日も、父と二人三脚でプロの道を目指してきた。

プロ入り後も苦労を重ねてきたが、父は「パッと咲く花はすぐに枯れる。苦労をした方がいいんだ」と説き伏せてきたという。

昨夜、茨城から寝ずに車を走らせて会場まで駆けつけた父は「智春の兄貴が応援してくれたから勝てた。長男が亡くなって、1年後に生まれた、あの子が優勝するなんて。最高の息子です」としみじみと語った。