「自分らしく」わが道を進む-。女子ゴルフで昨季国内2勝を挙げ賞金ランキングトップに立つ笹生優花(19=ICTSI)が、東京オリンピック(五輪)まであと半年と迫る中、日刊スポーツのインタビューに応じ、21年シーズンへの思いを語った。五輪から米ツアー参戦への意欲まで。夢は「世界一」という19歳の新星が余すことなく素顔を明かした。なお今回の取材は、東京都などに発出された緊急事態宣言の前に行った。【取材・構成=高田文太、松尾幸之介】

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20年シーズンはルーキーとは思えない戦いぶりだった。国内外15戦に出場し、夏場の8月に2週連続優勝を果たすなど、20位以内は12度。堂々の賞金ランキングトップで、コロナ禍で統合された20-21年シーズンを折り返した。

笹生 うれしいはうれしいですけど、まだ終わってないので。優勝したことは大きかったですし、安定していたのが良かった。毎週、全てがうまくいくことはなかなかないですが、その差をあまりつけないのがプロ。そういう風にできるよう練習を頑張っています。

日本人の父正和さんとフィリピン人の母フリッツィさんの間に生まれ、幼少期から米国での大会に出場するなど早くから国際経験を積んできた。米ツアーへの意欲も高く、19年には参戦に必要なシード権をかけた予選会の「クオリファイングトーナメント(QT)」に挑んだが惜しくも敗退。リベンジの気持ちは強い。

笹生 今できることを頑張って、いずれ行ければと思っています。ゴルフを始めた時から世界一になることが夢。世界ランキング1位ですね。(元世界ランキング1位でLPGA最多8度の賞金女王を誇る)アニカ・ソレンスタムさん(スウェーデン)らのレコードに近づきたいという気持ちは持っています。

1月のオフはフィリピンで練習を積む予定だったが、コロナ禍で急きょ中止し、国内調整に変更した。尾崎将司が指導する千葉に通いながら、21年3月の国内開幕戦、東京五輪を見据える。日本とフィリピンの両国籍を持ち、フィリピン代表として世界ランキングで五輪出場圏の1番手につけていることから、同国代表での出場を目指している。

笹生 五輪は6月終わりまで代表が決まらないので、それまでは1試合1試合頑張っていきたい。お母さんがフィリピン人で、お父さんが日本人なので(二重国籍でフィリピン代表として出場しても)自分の中では自分も日本人ですし、フィリピン人なので。どっちって言われても、両方なんだけどなという感じです。そこはあんまり自分は気にしていないですね。

五輪で使われる霞ケ関CC(埼玉・川越市)では昨年2度の練習を行った。常夏のフィリピンで体を慣らしてきただけに、東京の夏の暑さには自信をみせた。

笹生 コースは難しいと思います。暑さはフィリピンでは気温40度を超えることもありますし、自分は今まで暑いところでしかプレーしていなかったので結構大丈夫だと思います。五輪と言えば(陸上の)ウサイン・ボルトと、(競泳の)フェルプスですね。2人はメダルをたくさん持って首から下げていて、すごいなと思います。ゴルフは1回で終わるから、それはほぼ不可能じゃないですか(笑い)。アジア大会では金メダルでしたが、五輪は世界ランキング上位の選手がみんな出てくるし、レベルも違う。メダルはあまり考えずに臨みたいですね。

今年の意気込みを書いてもらうと、悩みながらも「自分らしく」としたためた。笹生が口癖のように言う「ゴルフを楽しむ」という言葉は、父の教えからだ。小学生の頃にミスで機嫌を悪くする姿を見た父から「そういうのは良くない」と諭された。「ゴルフはミスのゲーム。ミスをしてもしなくてもゴルフ全体を楽しむというようになった。うまくいってもいかなくても、そういう時間を楽しみたい」と誓う。

日本とフィリピンというアイデンティティーに誇りを持ち、笹生は笹生らしく、21年を戦いきる。

◆笹生優花(さそう・ゆうか)2001年(平13)6月20日、フィリピン生まれ。父の影響で8歳からゴルフを始める。幼少期からフィリピンや各国のジュニア大会で活躍。14歳でフィリピン女子ツアー優勝。15年にはサントリー・レディースで国内ツアー初出場。18年ジャカルタ・アジア大会で個人、団体ともに金メダル。19年オーガスタ女子アマで安田祐香とともに3位。同年11月のプロテストに合格。昨年国内ツアーは開幕戦で5位、2戦目で初優勝。弟3人、妹1人がいる。166センチ、63キロ。血液型B。