<全国高校総体:陸上>◇7月31日◇山梨中銀スタジアム

 女子やり投げで北口榛花(旭川東2年)が52メートル16で初優勝した。同種目での道勢の日本一は08年以来6年ぶり3人目。自身が持つ北海道高校記録53メートル08には届かなかったが、逆転を許して3位で迎えた5投目に順位をひっくり返し、6センチ差で頂点に立った。

 会場がどよめいた。5投目。北口がほかの選手の3分の1ほどの短い距離から助走を始め、投じたやりが50メートルラインを越え、大アーチを懸ける。1投目でトップに立っていたが、5投目で先に投じた2選手に逆転を許し、3位のピンチだった。52メートル16の記録で再び1位になったことを確認すると、きゃっきゃとはしゃいであたりを跳びはねた。日本一の座は周りも驚くまさかの短助走で勝ち取った。それでも「本当は全助走(長い距離での助走)で優勝したかった。自己ベストも出したかったし…」と興奮はすぐ冷め、初Vにも反省しきりだった。

 身長177センチと恵まれた体格でパワーは十分。3歳から昨年まで続けた水泳やバドミントンなどで鍛え上げた基盤が今に生き、助走による勢いなしでもやりを飛ばす才能がある。陸上は高校入学後から始めたが、競技歴はまだ浅く、一般的な全助走をまだマスターできていない。北海道高校新記録の53メートル08を4月の今季初戦でいきなりたたき出した時もまだ全助走に取り組み始める前だった。この日、ほかの試技ではすべて全助走に挑戦したが、「やっぱりあまり振り切れていないから」と自ら路線を変更し、勝ちに行った。

 高校日本一はあくまで将来の夢への通過点。6年後の東京五輪へ「選手としてやるからにはオリンピックにも出たい」と意気込む。自宅には自身の記録を折れ線グラフにして、成長を常に感じるようにしている。助走など磨くべきスキルはまだまだたくさんあるが、「日本高校記録を狙えたら」と、未完の大器の勢いはとどまるところを知らない。【保坂果那】

 ◆北海道勢のやり投げ優勝

 女子は北口で3人目。77年に伴幸恵(森)が初めて優勝。08年には右代織江(札幌第一)が制した。男子では99年覇者の佐藤紳也(札幌国際情報)と、昨年、北海道高校記録を更新する70メートル42で制覇した小南拓人(札幌第一)の2人。