<全国高校総体:陸上>◇1日◇山梨中銀スタジアム

 陸上男子走り幅跳びで、外川天寿(斜里3年)が追い風参考ながら7メートル60の好記録で3位に入り、初出場で表彰台をつかんだ。小学、中学時代は全国大会出場さえなかったが、オホーツク陸協の選手強化もあってメキメキ成長。昨年10月の日本ユース選手権3位で、同世代のトップクラス入りした。総体道予選は2位通過だったが、最高の舞台で潜在能力の高さを証明した。

 小学、中学では経験できなかった、同世代とのトップ争い。外川は力を出し切った。1、2回目ファウルで、上位8人が進む4回目へ後がなくなった3回目に7メートル33を跳び3位に浮上した。4回目は自己新の7メートル37。最終6回目は、追い風参考ながら7メートル60を記録した。目標の7メートル70には届かなかったが「ファウルになってもいいという気持ちで跳んだ」と納得顔で振り返った。

 冬場のハンディを言い訳にはしなかった。「本州に比べたら練習はあまりできないけど、北海道にしかできない練習もある」。斜里は冬場、氷点下20度以下になることもある。屋外では練習できないが、オホーツク陸協の力添えで、室内練習環境が整えられている。月に1度ある北見緑陵での管内合同練習では、廃タイヤをリサイクルした約80メートルのゴムマット上で、スパイクを履いての全力疾走が可能。短距離選手との同走は、助走速度アップにつながった。

 今年1、2月にオリンピック育成競技者研修合宿に参加した。日本陸連主催の20年東京五輪に向けた強化合宿で、同種目で選ばれたのは全国から4人。「(優勝した)佐久間(滉太=神奈川・法政二)の踏み切りを参考にした」とライバルの良い点は積極的に取り入れた。合宿で顔見知りとなった3人とも競ったこの日、厳しい争いだったが、充実感も体を満たした。

 故障と闘った高校生活でもあった。1年秋に腰椎分離症、2年春には右足首を骨折して道予選欠場。斜里の飯島進也監督(35)は「大会直前も左太もも裏を肉離れして、間に合うか心配だった。3位は立派」と喜び、「イメージできたことがすぐ体で再現できるのが素晴らしい」と、類いまれな陸上センスに脱帽する。高校生ならだれもが夢見る大会での表彰台に、外川も「大きな舞台で自信がついた」と誇らしそうだった。【保坂果那】

 ◆外川天寿(とがわ・てんじゅ)1997年(平9)1月8日、斜里町生まれ。斜里小4年で陸上を始め、5年から走り幅跳びを始める。斜里中3年の全道中学は4位で全国出場を逃した。斜里高2年の日本ユース選手権3位。名には「天寿を全うする」の家族の願いが込められている。家族は母と弟2人。170センチ、63キロ。