卓球女子W杯フィラデルフィア大会で、中国選手以外では初、また日本人としても初優勝を大会最年少優勝で達成した世界ランキング17位で16歳の平野美宇(エリートアカデミー)が11日、帰国した。ファンや関係者が出迎える中、伊藤美誠(15=スターツ)と並んで到着ゲートに姿を見せ、笑顔を浮かべた。

 大勢の出迎えを受けた平野は「びっくりしました」と、大きな目を一層見張ったが、すぐに冷静な表情に戻った。W杯フィラデルフィア大会前に出場したアジアジュニア大会では成績が残せなかった。「今まで負けたことがない選手に負けて調子は良くなかったんですが、そこから1試合ずつ調子が上向いてきました。決勝は絶好調でした。いつも美誠ちゃんに勝った時は調子よくその後の試合に臨めるので、決勝でも調子は良かったです」。W杯期間中にメキメキ調子を上げた様子を具体的に説明した。

 リオデジャネイロ五輪ではリザーブ選手として、練習パートナーを務め、悔しい思いもしてきた。「五輪代表から落ちた1年前は、しょうがないと思っていましたが、実際に五輪に行くと悔しい気持ちになった。それでも、練習相手を務めていたので、(代表の)3人がメダルをとった時はほっとしました」と、リザーブならではの複雑な胸中を振り返った。

 そこから担当コーチも替わり、筋力トレーニングを取り入れてきた。「全体的にパワーがついたと思います。体の使い方が変わったと思います。フォアの強打ですね。体が崩れずに、スキのないプレーができていると思います。10月からコーチが替わり、今までにないくらい練習などを変えました。高校からウエートも取り入れました。それまでスクワットは15キロでしたが、この前はマックスで37キロまで上げられるようになりました。目標は40キロです」。

 体重も増えたそうで「2~3キロ増えました」。何キロですかと質問が飛ぶと「今は…、ええ、言わないです」と両手を大きく振りながら笑った。今後は中国超級リーグに参戦する。中国生まれの日本人の家庭教師をつけて今は中国語の勉強に専念している。「コミュニケーションが大事ですから、自分から話し掛けるようにしたいです。今は、ニーハオくらいです」。

 銀色の優勝カップと賞金4万5000ドル(約450万円)獲得しており、注目の使い道には「友達や家族、コーチの方にごちそうしたい」と、笑顔を浮かべた。

 また、準々決勝で平野に敗れた伊藤は「美宇ちゃんは対応力が速くなった。(ポイントが取れそうな)そこを狙っても、厳しいボールが返ってきたり、態勢が崩れていても厳しいコースに返ってきたり、自分がポイント奪える時に逆に奪われたりしました。世界で戦える技術だなと思いました」と、実力をつけてきた大親友でよきライバルの平野の成長を分析していた。

 平野のW杯での優勝は、96年に始まって以降、大会最年少Vで、中国選手以外の優勝も初。世界ランク1位の丁寧、同2位の劉詩■は欠場していたが、平野は準決勝で世界ランク6位のフェン・ティアンウェイ(シンガポール)を4-2で破ると、決勝では同8位の鄭怡静(台湾)に4-0で完勝した。平野は今後、遼寧省の「鄂爾多斯(オルドス)1980」で中国超級リーグに出場する予定。

※■は雨カンムリに文の旧字体