女子55キロ級の奥野春菜(18=至学館大)が初出場で優勝した。五輪3連覇を誇る吉田沙保里(至学館大職)の父栄勝さん(故人)に指導を受けた「沙保里2世」。決勝でオドゥナヨフォラサデ・アデクロイエ(ナイジェリア)を5-4で下し、非五輪階級ながら世界の頂点に立った。

 金メダルが決まると奥野はあどけない顔を涙でくしゃくしゃにした。「優勝という結果を得られて、ほっとしている」。重圧から解放され、秘めていた感情が一気にほとばしった。

 4月のジュニアクイーンズカップで53キロ級代表の向田真優(至学館大)に敗れた翌日、栄和人監督から五輪で実施されない55キロ級への階級変更を打診された。「悔しかった」が、すぐに気持ちを切り替えた。世界選手権代表選考会を兼ねた6月の全日本選抜選手権の前日、栄監督に「LINE」で決意を示した。「優勝して必ず世界に行きます」。

 5-4で振り切った決勝以外の3試合はテクニカルフォール勝ちや無失点勝ち。得意のタックルから畳み掛ける攻撃的なスタイルが光ったが、自己評価は辛口だ。世界女王となっても「今回は勝ちにこだわった。内容はまだまだ」と手放しでは喜ばない。

 目指すのは3年後の東京五輪。階級によっては、大学の先輩の向田や尊敬する吉田沙保里(至学館大職)と代表を争う可能性がある。18歳の新星は「レベルの高いところでやり合って、自分もどんどん強くなる。挑戦し続けるだけ」と力を込めた。

 ◆奥野春菜(おくの・はるな)1999年(平11)3月18日生まれ、三重県出身。吉田沙保里の父栄勝さんが主宰した一志ジュニア教室で2歳半からレスリングに親しんだ。三重・久居高では52キロ級で14~16年に全国高校総体を3連覇し、昨年の世界カデット選手権で金メダル。55キロ級で今年の全日本選抜選手権初優勝。158センチ。