全日本選手権3連覇中のエース宮原知子(19=関大)が女子SPで320日ぶりの実戦復帰を果たし、65・05点の6位に入った。昨年12月の全日本選手権後に左股関節の疲労骨折が判明し、リハビリに取り組んできた。ジャンプは10月に再開した段階ながら、上々の出来で全日本選手権(12月、東京)へ視界良好。18年平昌(ピョンチャン)五輪代表2枠を争う女子に、役者が帰ってきた。

 「宮原知子さん、ニッポン」。聞き慣れたアナウンスを合図に、宮原は「今まで以上に大きく聞こえた」という大声援を一身に浴びた。「やっと大きな舞台に戻って来られた」。懸念された冒頭の連続ジャンプ。スタンドでは同じ関大で練習する後輩たちが両手を握りしめ、目を閉じた。

 3回転ルッツが回転不足となり、続くトーループを冷静に3回転から2回転へ切り替えた。その上で3回転ループ、ダブルアクセル(2回転半)と加点付きのジャンプを跳んだ。3つのスピンは全て最高評価のレベル4と「練習の虫」らしく努力の跡をしるした。「演技自体は納得いっていないけれど、悪いスタートじゃない」。大歓声と対照的に理想へのギャップを口にしたのが、勝負師の本能だろう。

 3月下旬からは人生で初めて約1カ月間、氷を離れた。疲労骨折だけでなく栄養不足に睡眠不足…。故障はこれまでの生活を見直す機会となり、嫌いな牛乳を飲むなど改善に励んだ。一方で練習量は減った。10月にジャンプを再開しても1日10本の制限付き。その中でジャンプ以外の要素をコツコツと磨き上げた。

 徹底された再発防止。今大会も周囲から「無理しなくていい」と促されながら、出場を決めた。浜田コーチは仕上がり具合を「あとはジャンプをはめ込むだけ。スケートはきれいだけれど、スピードとかパワーがまだちょっと。筋力が7割ぐらいなので」と評し「来週から追い込める」と見据える。宮原は「練習では少しずつ去年よりいいものができている」と照れくさそうに笑い、出遅れた五輪レースに加わった。【松本航】