女子組手で植草歩(26=JAL)が大会史上初の4連覇を達成した。初戦の2回戦から安定した試合運びで勝ち上がり、決勝では初対戦の八頭司歩(21=宮崎産業経営大)に3-0で快勝。5試合をオール無失点の“完全優勝”で世界選手権決勝敗退の屈辱から立ち直った。

すべて上段だった。決勝の“歩決戦”。開始56秒、一気に距離を詰めて左、右、左と連続した突きで先制する。1分17秒に左から右のワンツーで加点すると、終了直前にも相手の攻めを見切って右カウンターでダメを押した。「団体戦(8日)も含めて、高校生と対戦することも多いと思って準備してきました」。5試合で20得点無失点。ポイントの多くを得意の中段ではなく、上段突きで決めた。

今大会は東京オリンピック(五輪)出場につながるランキングポイントを獲得できる国際大会のシリーズA(上海)と日程が重なり、日本代表クラスの強豪が欠場。植草にとってもライバル不在の戦いになったが、準備だけは怠らなかった。引き気味に逃げるであろう初対戦の高校、大学生対策で、距離が遠い中段よりも射程の短い上段突きに磨きをかけてきた。その中で11月の世界選手権決勝で連覇を逃した自分とも向き合った。

「上段は海外仕様でもあるんです。中段突きの植草ではなくて、オールマイティーな植草になりたいから」。世界選手権決勝では負けられないという思いから守りに入り、攻める姿勢を見失った。カウンター頼りの粗くなった自分の組手を見直す手段の1つが上段突き。勇気を持って踏み込む攻撃的な姿勢を取り戻すきっかけになった。

1月からは世界最高峰の国際大会、プレミアリーグがスタートする。昨年、今年と2年連続総合優勝を飾っており、目指すのはもちろん3年連続の女王の座。「蹴りもまだまだ足りない。もっともっと強化して、東京で金メダルを取ります」。団体戦で千葉を3連覇に導き、個人でも史上初の4連覇。18年を3年連続の2冠で締めくくった植草は、進化しながら20年東京へ歩みを進める。