フィギュアスケート男子の高橋大輔(32=関大KFSC)が22日、5年ぶりの全日本選手権に臨む。ショートプログラム(SP)を翌日に控えた21日の公式練習で4回転トーループに成功した。24日のフリーで今季初めて4回転に挑むプランがあるが、注目されるジャンプの順番は演技冒頭になった。14年2月のソチ五輪期間中に24度連続失敗した因縁のジャンプで、過去を乗り越える構えだ。

何度でもいく。高橋は、公式練習の終盤にトーループだけを繰り返した。2回転、3回転、3回転、2回転、3回転。4回転でステップアウト、1回転、4回転で転倒、1回転、4回転で右手をつく。3回転で着氷が乱れて両手をついた。それでもまだいく。12度目で、4回転トーループをクリーンに成功させた。

今季は4回転トーループをプログラムに組み込んでなかった。練習に入ったのは2週間前。高橋を指導する本田武史コーチはいう。「(成功は)やり始めてすぐですね。(ジャンプの)感覚は残っているんでしょうね」。4年ぶりの現役復帰、限られた練習時間だったが、24日のフリーに組み込むことが視野に入った。4回転トーループはフリー当日の状態を見て決めるが、本田コーチは「(入れる場合は)フリー冒頭です」と説明した。

因縁のジャンプだ。4年のブランクを作る最後の演技は14年2月のソチ五輪のフリーだった。当時は10年バンクーバー五輪銅メダルに続く2大会連続メダルを目指した。しかし11月の練習で3回転ルッツの着氷時に右膝を負傷。陥没骨折一歩手前だった。けがを引きずった高橋はソチ入りからフリー直前まで練習、SPを含めて4回転トーループに23度連続失敗。それでもフリー冒頭で4回転トーループにチャレンジして失敗。6位に終わった演技後に「4回転を入れない選択肢はなかったのか」と聞かれて、きっぱりと言った。「そこは外せない。最後まで希望を捨てずにいきたかった。1本は決めたいと」。

欧米勢以外で初の五輪メダリストは4回転を回避して、五輪のリンクに立つことをよしとしなかった。結局、ソチで1度も成功しない無念を残したまま、同秋に引退を表明した。

4年10カ月という長い時を超えて、因縁のジャンプが視野に入った。会場は、優勝5度中3度を飾った大好きな東和薬品ラクタブドーム。24度連続失敗の過去を清算する舞台になる。【益田一弘】