ノルディックスキー・ジャンプ男子の小林陵侑(22=土屋ホーム)が、10日(日本時間11日)にオスロ(ノルウェー)で行われたW杯個人第23戦で総合優勝を決めた。日本男子初の快挙に、札幌市内の所属先も沸いた。元ジャンプ選手でスキー部の千田侑也部長(33)は「後輩だけど尊敬する。すごいなって思う」と手放しで喜んだ。

小林陵は15年入社。天才的なジャンプ動作と身体能力に、監督兼任の葛西紀明(46)らスタッフ全員がほれ込み、盛岡中央高1年時に声をかけた。八幡平市立松尾中学時代に、飛び抜けた実績があったわけではない。「活躍する確率は低いかもしれないけど可能性は秘めている」で意見は一致した。

日常生活では遅刻などもあり、メンタル面ではムラがあった。今季は夏場のサマージャンプの好調ぶりから「悪くても個人総合5位以内は入る」と確信していたという。だから、千田部長は、あえてカツを入れた。「世界一の称号をもらった時、次は自分の事を見られるんだぞ」。3日に閉幕した世界選手権(オーストリア・ゼーフェルト)で応援に駆け付けた時は「世界トップ選手の雰囲気、自覚があった」と成長を感じたという。

昨年は、新たな試みとして若手選手に脳波トレとメンタリスト野村祥孝氏を招いた座学を行った。幼少期から蓄積された技術的な経験値と、精神面の充実がかみ合った今季。千田部長は「すべてのことが無駄では無かった」としみじみ回想した。まだ22歳。W杯総合の連覇、世界選手権や五輪のメダル…、挑むべき目標は、まだまだある。足踏みする時間はない。千田部長は「最短3年で全部獲得したら引退してもいいくらいの偉業になる。そう本人には話したい」と先を見据え、その上で「しっかりサポートしていきたい」と続けた。【西塚祐司】