22歳で大技トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を習得した細田采花(あやか、24=関大)が全日本選手権(12月、東京)の切符を逃した。

前日のショートプログラム(SP)で19位と出遅れ、フリー93・67点の合計141・02点で16位。上位12人の同選手権出場枠に届かなかった。

1年前に笑った舞台で、細田が涙した。巻き返し必須のフリー。冒頭、こだわりの3回転半は1・44点の加点で成功させた。続く2本目は「すごくいける時の自信とは違った」と2回転半にとどめた。順調な出だしだったが、中盤からのジャンプで4つの回転不足。最後の3回転サルコーでは転倒した。18年の西日本選手権ではSP終了時点で当落線上だったが、3回転半を2本成功させて号泣。この日の演技は、正反対のものになった。

「『やってしまったな』『終わったな』っていうのが素直な気持ち。(課題は)メンタルの面。アクセルに関しては去年ですごく自信がついたけれど、他のジャンプを練習通りにできなかったです」

17年1月に1度は引退を決断。それでも一緒に練習する後輩の紀平梨花(関大KFSC)に誘われ、遊び半分で滑った際に22歳で3回転半を初成功させた。ジュニアを含めた、若い選手に習得者が多い大技。何かに導かれるように、現役続行を決断した。

「長い間スケートをしていたら、年下に抜かれたり、いろいろある。でも『最後まで頑張っていたら跳べるんだよ』って、そういうのを見せたい」

1年、また1年と延長してスケートに打ち込み、18年全日本選手権では自己最高の8位。3回転半は誰にも負けない武器になった。

現役続行か、引退か-。今春も過去2年と同じように迷った。今年5月にはにっこりと笑って説明した。

「現役を続ける理由は…『スケートが好きすぎて』です。スケートがなくなったら、私じゃなくなる気がする。『上に行きたい』『あの試合に出たい』というより、スケートから離れられない気持ちがあった。それで『もうちょっと続けてみよう』と決めました」

浜田美栄コーチと、ともに指導を受ける、田村岳斗コーチには念押しをされた。

「今季すごく良かったけれど、来季も同じことをするのは難しいよ。トリプルアクセルに対する期待もあるし、いろいろと難しいと思う。続けるのであれば、それは覚悟した方がいい」

近畿選手権を突破し、迎えた今大会。SPを終えると「去年は『アクセル跳びたい!』という感じだった。今年に関しては『降りないといけない』。自分自身に自覚を持たせるためにも、あえてそう思っています」と口にした。結果は悔し涙だったが、現役を続けなければ知らなかった感覚だったかもしれない。

失意の演技後、自ら今後について口を開いた。

「今は、先のことは考えられないです。もうちょっと落ち着いて、今後のことを考えたいと思います」

時折、感情を包み隠すように笑い、静かにリンクを後にした。【松本航】