20年東京オリンピック(五輪)で金メダルを期待されるバドミントン男子シングルスの桃田賢斗(25=NTT東日本)が13日、遠征先のクアラルンプールで交通事故に巻き込まれた。

宿泊先のホテルから空港に向かうため乗車していた送迎のワゴン車が、高速道路で前方の大型トラックに衝突。運転手は死亡した。2列目に座っていた桃田は命に別状はないものの、顔などにけがをした。日本協会は全身打撲と発表した。また、同乗していた平山優コーチ、森本哲史コーチも負傷した。

   ◇   ◇   ◇

現地の消防当局などによると、事故は現地時間の13日午前5時ころに起こった。桃田、平山コーチ、森本トレーナーら5人が乗車するワゴン車は、ゆっくり走っていた大型トラックに追突した。その衝撃でワゴン車の前方部はつぶれた。生存が確認された人から救急搬送された。運転手は死亡した。

ワゴン車の2列目に座っていた桃田は顔面から流血した。日本協会の発表によると顎、眉間、唇の裂傷、全身打撲。命に別条はなく、自力での歩行も可能で、意識ははっきりしており、日本協会のスタッフともラインなどで連絡もできているという。マレーシアの警察当局などによると鼻骨骨折とされるが、日本協会が現地のコーチを通じて連絡したところ、確認されていない。現在は病院で治療を受けている。マレーシア協会は13日夜、桃田らについて「順調に回復している。ただ経過観察のため今夜は退院できない」と発表した。今後の帰国日程は未定。

世界ランキング1位の桃田は前日12日にマレーシア・マスターズで優勝。下肢の炎症のため、インドネシアへ向かう日本選手団から離れ、13日午後に羽田空港に到着する予定だった。本隊より約30分早く宿泊先を出発し、マレーシア協会が手配したワゴン車でクアラルンプール空港に向かうため、高速道路を移動中に事故に遭った。

2列目にいた森本トレーナーは右腕骨折、脳振とう、全身打撲で別室で治療を受けているという。3列目に乗車していた平山コーチは右すね裂傷、歯の損傷、全身打撲。ともに命に別条はなく、意識もはっきりしている。3列目に同乗していた世界連盟の技術スタッフもけがをした。

桃田は16年リオデジャネイロ五輪もメダルを期待されていたが、同年4月に違法賭博問題が発覚。1年強の出場停止期間を経て競技に戻り、昨年は世界選手権、ツアーファイナルなど国際大会で11勝。18年9月から世界ランキング1位を1年以上もキープしている。昨年12月に東京五輪代表も確実にし、金メダル最有力候補だったが、思わぬ不運に見舞われた。

◆桃田賢斗(ももた・けんと)1994年(平6)9月1日、香川県三豊市生まれ。吉津小2年でバドミントンを始める。福島・富岡高3年の世界ジュニア選手権で日本人初優勝。18年8月に世界選手権で日本男子初の金メダル。昨年は世界選手権、ツアーファイナルなどを制し、史上初の国際大会年間11勝。家族は両親と姉。175センチ、68キロ。左利き。血液型A。

<桃田経過>

16年4月 違法カジノに出入りしていたことが発覚し、謝罪会見を行い、大会の無期限出場停止処分を受ける。

17年5月 日本ランキングサーキット大会で1年1カ月ぶりに復帰。

18年1月 日本代表に復帰し、ワールドツアーに参戦。

18年8月 世界選手権で日本男子初の優勝。

18年9月 初の世界ランキング1位になる。

18年12月 全日本総合で3年ぶり2度目の優勝。ツアーファイナルで準優勝。

19年3月 全英オープンで日本男子初の優勝。

19年8月 世界選手権で日本男子初の連覇。

19年12月 全日本総合3連覇。ツアーファイナルで4年ぶり2度目の優勝を飾り、ワールドツアー年間最多11勝。東京五輪出場も確実にする。