社会人女子バスケットボールの強豪・山形銀行ライヤーズに、4人の新戦力が加入した。ガード伊藤里奈(22=愛知学泉大)はチーム最少161センチと小柄ながら、岐阜女時代に全国高校選手権優勝に導いたシュート力が武器。センター大串梨沙(22=鹿屋体大)、フォワード井上桃子(22=関学大)、ガード上野綺瞳(きらら、18=山形商)とともに、1年目から主力として期待される。新型コロナウイルス感染拡大の影響で地域リーグ開幕は9月に延期されたが、今年2月の全日本社会人地域リーグチャンピオンシップ決勝で敗れた秋田銀行撃破へ、底上げを図っていく。

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伊藤が勝者のメンタリティーを注入する。高校時代には、岐阜女の初優勝に貢献。小柄ながら外からだけでなく、中へのドライブも魅力だ。「小さい分、3ポイントと素早く走って振り切ることは磨いてきたつもり。シュートはとにかく打ち込み。気持ちの持ち方も大事なので、常に残り何分で何点負けてるとかを想定して練習してきました」。培ってきた勝負強さでレギュラー入りを狙う。

15年冬の全国高校選手権決勝では、桜花学園(愛知)の3年連続3冠を阻止した。同年の全国総体は4点差、国体は2点差と決勝で敗れた相手に、一時は第2クオーター途中で15点のリードを許したが、伊藤の3点シュートなどで逆転。「ずっと打倒桜花を意識して相手の特徴をビデオなどで研究して、各自の役割をイメージしていました」。昨季の山形銀行も宿敵・秋田銀行の壁に阻まれた。国体東北予選は勝利したが、東北のリーグ戦で2連敗。全日本社会人地域リーグチャンピオンシップ決勝も、同行にわずか2点差及ばず優勝を逃しただけに、伊藤の存在はカギを握る。

愛知学泉大では昨冬の大学選手権で4強。両足首などの度重なるケガにも泣かされ、本領発揮にはほど遠かった。「ケガをしないようにして、良いパフォーマンスを見せたい」。静岡・湖西市出身で、初めて東海地方を出た。高校、大学は寮での団体生活だったため、初の1人暮らし。「仕事との両立だったり、家族に会えなかったり不安はあるけれど、毎日家族に電話しているので大丈夫です」。仲良しの父らの応援も背に、東北の新天地を15年以来の日本一に導く。

【鎌田直秀】

○…山形・鶴岡市出身の上野は、地元の盛り上げを誓った。山形商でも全国大会には出場したが、県外強豪校とのレベル差を何度も痛感。「卒業後も山形のチームに入りたかった。先輩たちも大卒の人が多いので、経験は少ないけれど若さで頑張りたい」。170センチの恵まれた体を生かしたジャンプシュートや、ドライブにも自信を持つ。

昨年4月、左前十字靱帯(じんたい)断裂で手術。昨冬の全国高校選手権山形県予選決勝で山形中央に敗れ、30連覇を逃したチームの力になれなかった悔しさも味わった。「ケガして学んだこともある。弱かった体幹も鍛えられたし、柔軟性も養えた」。無理すれば早期復帰も可能だったが、辛抱したのは社会人で活躍するため。「レベルが高い選手と、一丸となって全国優勝を目指したい」と公式戦再開の時に備える。

○…井上はポジションにこだわらず、豊富な攻撃のバリエーションをチームに還元する。バレーボール、水泳、空手なども経験した運動能力の高さも魅力。関学大初の新人賞を獲得し、4年時は主将も務めた。「体も技術も高いレベルで出来ることが楽しみ。攻撃では相手が嫌がることをやり続けたいし、守備でも新人らしく声を出して盛り上げたい」と意気込んだ。

○…大串は179センチの長身で、鹿屋体大時代には九州リーグでリバウンド王を4度獲得した。昨年の全国大学選手権も、強豪の筑波大を破るなど8強進出に貢献しただけに「強みのリバウンドやポストプレーで活躍したい」。山形での生活には「(大学の)鹿児島は暖かいので気温が全然違う。今までは火山灰ばかりだったので、雪が降るのは少し楽しみ」と笑った。