フェンシングの全日本選手権が17日、東京・駒沢体育館で開幕し、予選初日は女子エペと男子サーブルが準決勝まで行われた。試合前に全選手がスマートアンプ法による新型コロナウイルスの検査を受け、陰性者だけが会場に入れるよう徹底。女子で決勝進出の34歳佐藤希望が「試合より検査の方が緊張した。(陽性で)帰ることになったらどうしようと思って」と話すなど緊張感があった中、全員陰性で計32人が新型コロナ後初の公式舞台に立った。

感染症対策で、両種目とも出場者を昨年の74人から16人に制限。検査後90分間の待機、序盤から上位対決等の要素が重なり、前回女王の原田紗希は初戦敗退した。男子も昨年優勝のストリーツ海飛(かいと)やランク1位の徳南堅太が2戦目で沈む波乱。日本協会の太田雄貴会長が「みんな前のめり。試合展開が例年より早かった」と感じたように、試合に飢えた選手や若手が勢いで押し切った試合が多く、男子は埼玉・星槎国際高川口3年の小久保真旺が決勝に初めて進んだ。

東京オリンピック(五輪)の屋内対人競技では初の全日本級大会。勝敗以上に無観客、会場でのピスト(競技コート)や用具消毒、関係者の検温管理が注目された。無事に初日を終えた太田会長は「全員検査を含め、ここまでやれば安心安全に開催できることを示せた。少しでも他競技団体の参考になればうれしいし、この積み重ねがスポーツ再開への国民の理解を取り戻すきっかけになれば。来夏の東京五輪につながると信じたい」と第1歩を総括した。予選は19日まで。男女6種目の決勝は26日に行われる。【木下淳】

◆スマートアンプ法を活用した新型コロナウイルスの迅速検出法 神奈川県衛生研究所と理化学研究所が開発したもの。7月にダナフォーム社(本社・神奈川県)が簡易パッケージ化し、1時間に24検体の検査が可能となった。研究用試薬の段階では陽性一致率90%、陰性一致率は100%。神奈川県が「検査の神奈川モデル」として医療機関への導入を推進し、日本サッカー協会なども導入。