地元の星が、完全燃焼した。今季をラストシーズンと決めている河西萌音(21=山梨学院大4年)が、ショートプログラム(SP)10位から登場。フリーは90・50点の14位で総合14位となり、11位までが獲得できた全日本選手権(12月24~27日、長野)の3年ぶり出場権を逃した。

悔いはない。きらびやかな衣装で映画「アラジン」のジャスミンになり切り、冒頭の3回転ループ-2回転トーループを美しく成功させた。その後は回転不足もありながら、ダブルアクセル(2回転半)は2本とも決めて意地を見せる。最後2つのスピンは、ともに最高評価のレベル4を獲得する出来。持ち前の表現力で万感の演技を締めくくった。

慣れ親しんだ小瀬のリンク。「スケートを始めてから19年間、ここの氷で練習してきました。思い入れは強いです。それが今季、無観客になってしまって…。地元の人たちに見ていただきたかった。その夢はかなわなかったですけど、見てくれているような、会場にいるような気分で楽しく滑ろうと思いました」と、甲州の地で培った技術を出し尽くした。

今季限りで現役引退することを決めた。全日本につながる関東選手権は2位で突破。最終予選会となる東日本の舞台が甲府だったのは運命的だった。「私にとって最後の大きな試合になるので。いつも滑り慣れている氷で、自分の力を出し切ろう、楽しく滑ろうと。それは達成できたかなと思います」と満足した。

お隣の長野で行われる最高峰舞台には、たどり着けなかった。あと3・19点、足りなかった。それでも「結果は意識すると緊張して固まってしまうので、楽しく演技することだけを考えました」。涙はなかった。

全日本選手権に続く戦いなど、競技の第一線からは退くつもりだが「スケートが好きなので、スケート関係の仕事に就きたいなと思います」。競技の魅力を伝え、発展させる立場で、今後も愛する競技に携わっていくつもりだ。【木下淳】