何かに導かれたような、幸せな80分間だった。

慶大CTB三木亮弥(4年=京都成章)は「弟とは最初で最後の対戦。何度かマッチアップもできて、本当にうれしかったです」と思いをにじませた。相手の京産大で3学年下の弟、フランカーの皓正(こうせい、1年=京都成章)が兄と同じくフル出場していた。

実現していなかったかもしれない「兄弟対決」だった。京都成章高時代は2人そろって主将。兄が卒業した17年春、入れ違いで弟の皓正が入学した。皓正も当初は慶大志望だったが、昨年にAO入試を受験して不合格。同校の湯浅泰正監督に「行くところが全てじゃない。行ったところでどうなるか」と背中を押され、かつて父康司さんが主力として活躍した京産大に進んだ。同じ慶大であれば、対戦することはなかった。

普段から連絡をこまめに取り合ってはいない。それでも弟は「兄がいるので見ますね」と明かし、亮弥が慶大の副将として出場する関東対抗戦をテレビ観戦してきた。「兄は物おじしないタイプ。僕は消極的」。そう性格の違いを口にするが、グラウンド上では「タックルが武器」という共通点がある。

この日、兄の亮弥は35-14で迎えた後半26分にダメ押しのトライ。対面だけでなく、相手FWにも鋭いタックルを浴びせ続けた。次戦は19日、早大(関東対抗戦2位)との準々決勝(東京・秩父宮ラグビー場)に臨む。99年度以来、21大会ぶりの大学日本一へ-。兄の戦いは続く。【松本航】