北海道銀行がピョンチャン・オリンピック(平昌五輪)銅メダルの前回覇者ロコ・ソラーレを7-6の逆転で破り、6年ぶりの日本一に輝いた。負けたら五輪の可能性が消滅する大一番。昨年5月に結婚した吉村紗也香(29)を中心にメンバーは結束。五輪3大会出場の小笠原歩からスキップを引き継いで3季目。重圧を乗り越えながら、チームを引っ張り、22年北京五輪出場へ望みをつないだ。

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吉村の大きな瞳が潤んでいた。抱き合って喜び合ったメンバーと一緒に受けた優勝インタビューで「本当にうれしい。やっと優勝できて今はすごくほっとした気持ち」と、安堵(あんど)感をあふれさせていた。「北京五輪までの道をつなげることができた」。負ければその道が途絶えていた。夢をまだ目指せる権利を手にした。その喜びがあふれた。

スキップ同士の我慢比べに勝った。第9エンド(E)の2投目では、相手の石だけをはじき出して3個をハウス内に残す好ショット。結果的に相手に1点取らせ、最終エンドを後攻で迎えられ、逆転につなげた。「今日はみんな集中力を切らさずに1投1投つなげられた」と会心の戦いぶりで、1次リーグとプレーオフで敗れていた相手に雪辱した。

メンタル面の成長が優勝につながった。第4Eのラストショットはハウスの中心ぴったりのスーパーショットだったが、直後、仲間のタッチストーンのミスがあり無効になった。スチールのチャンスも2失点だったが動じない。「大丈夫」と声を掛け合い、気持ちを切り替え、次のエンドで1点を取り返した。昨春からメンタルトレーニングに個人的に取り組み始めた。昨年の日本選手権で準優勝の中部電力に大差で負けた悔しさで「変わらないと」と決意。勝負弱かった自分を変えてみせた。

日本選手権準優勝に輝いた常呂高時代から五輪代表決定戦に挑み続けてきたが、まだ世界選手権、五輪に出場した経験はない。五輪3大会出場の前スキップ小笠原歩からバトンを引き継いで3季目。重圧もあった。やめたいと思う時もあった。それでも「五輪に出たいと、諦めずに何とか辛抱しながらやってきた」。昨年5月に札幌在住の男性と結婚し、公私ともに充実。次は代表決定戦で勝ち抜き、夢をかなえてみせる。【保坂果那】

〇…男子はコンサドーレが北京五輪日本代表となる権利をつかんだ。4月にカナダで行われる世界選手権で6位以内に入れば、北京五輪に日本代表として出場することが確定する。ここで出場枠を取れなかった場合は、12月の世界最終予選に回る。女子は3月にスイスで予定されていた世界選手権がコロナ禍で中止。世界連盟は五輪出場権を決める代替案を検討中。ロコ・ソラーレは日本選手権の連覇達成が日本代表となる権利獲得の条件だったが、北海道銀行が阻止したことで、後日あらためて代表決定戦が行われる。

◆北海道銀行フォルティウス 11年4月に02、06年五輪2大会連続出場の小笠原歩と船山、吉田知那美(現ロコ・ソラーレ)、小野寺で結成。世界最終予選で出場権を獲得した14年ソチ五輪は5位。同年5月に吉田知が退団し、吉村、近江谷が加入し15年の日本選手権で初優勝。平昌五輪代表を逃した18年6月には小笠原が退団し、昨年4月に伊藤が加入して現体制になる。チーム名はラテン語で「より強く」を意味する。