ラグビーファンにとって新たな楽しみが生まれた。

天理大の一員で20年度の全国大学選手権初優勝に貢献した近鉄CTBシオサイア・フィフィタ(22)が1日、トップチャレンジリーグ(TCL)2連覇が懸かる豊田自動織機戦(3日、滋賀・布引グリーンスタジアム)先発に名を連ねた。

従来は夏~冬に行われてきた社会人のラグビー。だが、19年W杯日本大会が開催された昨季(19-20年シーズン)は1月、今季は2月開幕と、日程が“年度またぎ”になった。

当然、生まれるのが「新入団選手はいつから出られるの?」。その出場解禁はトップリーグ(TL)、TL2部相当のTCLともに「4月以降」と定められている。昨季は新型コロナウイルスの影響により、第6節(2月22~23日)で打ち切り。“新しい様式”の実践は今季が初めてとなる。

この日の取材で、日本語を巧みに操るフィフィタが「僕もうれしい。僕ももっと頑張らないと」と声を弾ませた話題があった。

天理大の同期であるクボタSH藤原忍(22)がTL第6節サントリー戦(3日、東京・秩父宮ラグビー場)に控えでベンチ入り。それをわが事のように喜んでいた。

トンガ出身のフィフィタにとって、藤原は最も自分を知る同期といえる。

日本航空石川高入学で来日し、天理大まで7年間、同じBKとしてチームを支えた。私生活でも藤原との会話の中で日本語を覚え、世代別代表でもそろって活躍してきた。その集大成が21年1月の全国大学選手権。関西勢36季ぶりの優勝で大学生活を締めくくると、フィフィタは「次は忍と桜のジャージーを着て戦いたい」と思いを込めていた。

2人は別々のチームに巣立ったが、以降も連絡を取り合ってきた。この日、フィフィタは「流選手、斎藤選手がいるサントリーだから…」と丁寧に説明を始めた。藤原が所属するクボタの対戦相手となるサントリーには、19年W杯日本代表の流大(28)、若手有望株の斎藤直人(23)という両SHがいる。親友が日本代表入りを目指すには越えなければいけない「壁」であり、デビュー戦がいきなり試金石となるのでは…という分析だった。

4月3日午後2時-。

偶然にも同じ時間にフィフィタは滋賀で、藤原は東京で、社会人としての初陣を迎える。フィフィタは「このチャンスを逃さないように、13番を背負って戦いたい」と自らを鼓舞した。

見る者をワクワクとさせる、ルーキーたちの挑戦が始まる。【松本航】

◆シオサイア・フィフィタ 1998年12月20日、トンガ生まれ。日本航空石川高進学で来日。高校日本代表に選出され、17年に天理大へ入学。1年時からレギュラーをつかみ、2年時に全国準優勝、4年時に優勝。U20(20歳以下)日本代表、ジュニア・ジャパンも経験。20年はスーパーラグビーの日本チーム「サンウルブズ」入り。趣味は映画観賞。187センチ、105キロ。