ラグビーのトップリーグ(TL)神戸製鋼で、新たな「サラリーマン選手」のデビューが間近に迫った。

2日、チームは開幕6連勝が懸かるパナソニック戦(4日、神戸ユニバー記念競技場)のメンバーを発表。その控えにフッカー松岡賢太(23)が名を連ねた。 エンジニアリング部に在籍し、原子力事業や、地雷撤去時に使用される装置など、想像もしなかった分野に携わるようになった。主に海外のプロジェクトの見積もりなどを担当。18年のTL優勝を見て「このチームだ!」と進路を決めた男は、学びの日々を過ごす。

明大3年時に大学日本一に貢献。神戸製鋼へ社員として入社した1年前の春から驚くことばかりだった。

「神戸製鋼って、こんなこともしているんだ…」

社業とラグビーを両立しながら、初めて迎えるシーズンでチャンスをつかみ「コンタクトの激しさは自信がある。すごく楽しみ」と笑顔を見せた。

明大時代の同期には同じフッカーで主将の武井日向(23、現リコー)がおり、大学での序列は2番手。だが「日本一に近いチームでやれる。日本代表を目指したい」と鼻息は荒い。当初は開幕NEC戦(2月20日)で先発起用される予定だったが、試合2日前の練習で左ふくらはぎを肉離れ。すでにデビューした武井らの活躍に焦りを募らせながらも「再発したらダメ。復帰したときにいいパフォーマンスをしよう」と下半身を重点的に鍛え上げてきた。

持ち越されたデビュー戦。相手の強豪パナソニックは今節、先発に坂手淳史(27)、控えに堀江翔太(35)と19年W杯日本代表のフッカー2人をそろえてきた。堀江は大阪・吹田ラグビースクール、坂手は京都成章高の先輩。全勝同士の大一番が初陣となれば、今の立ち位置を知る格好の機会となる。パナソニックには前身の三洋電機時代の03年に勝ったのを最後に、15連敗中。勝てば優勝に近づくと同時に、負の歴史に終止符を打つことができる。

舞台は整った。

「(見る人に)『神戸の松岡いいね!』と思ってもらえるようにしたい。接点の激しさ、球際のスピードは、お二方に引けを取らず、勝負できると思います」

23歳は堂々と、自分の名前を売り込む。【松本航】