フェンシング女子サーブル日本代表で、今夏の東京オリンピック(五輪)の個人出場枠を確保した江村美咲(22=中大)が9日、都内で会見し、日本フェンシング界で初となる「プロ宣言」をした。

「決断の主な理由は2つあります。1つは、昨年開催予定だった東京五輪に向けて、ご支援いただいていたスポンサーの皆さまに恩を返すことができていないのに、特定の企業に就職するという選択ができなかったことです。大会が延期になり、五輪より先に大学の卒業を迎えることになりました。東京五輪で活躍し、経験を共有することで恩返ししたかったのですが、できていない状態のまま特定企業に就職することには納得できませんでした」

「もう1つは、今までスポンサー収入だけで活動しているフェンシング選手がまだ日本におらず、前例のない新しい道を、自分が切りひらきたいと思ったことです。この選択が、いい結果につながるかどうかはまだ分かりませんが、自分が成功することで次の世代の選手たちに、新しい夢や可能性を持ってもらえるのではないか、とやりがいを感じています」

「プロになれば、結果次第では活動を続けられなくなるかもしれません。反対に、さらにスポンサーさんの支援を得られる夢もあります。どれだけ自分の価値を上げられるか、という挑戦だと思っています。可能性を信じて、東京五輪での金メダル獲得に向けて、自分を信じて頑張っていこうと思います」

プロになるため、今春の大学卒業を機に、不動産業などを手掛ける立飛ホールディングス(東京・立川)に所属することも発表。一般的な社員採用の企業選手ではなく、競技に専念できるプロ契約で、海外遠征費など自己負担や不安が多い環境の中、練習と試合に集中できる環境になる。村山正道社長も「24年パリ五輪まで支援します」と大型契約の期間を明言。計5社の支援を受け、プロ選手として競技に集中する。

国際フェンシング連盟は先月14日、サーブルの東京五輪出場権を争うランキングを更新し、江村の初五輪が確実になった。父宏二さん(60)も88年ソウル五輪男子フルーレ代表、08年北京五輪代表では監督を務めたオリンピアン。「日本初の父娘2代五輪出場」となり、大舞台に「日本初のプロフェンサー」となって挑む。【木下淳】

◆江村美咲(えむら・みさき)1998年(平10)11月20日、大分県生まれ。小学校3年で始め、中学進学を機にフルーレからサーブルへ転向。高校からJOCエリートアカデミーで学ぶ。中大法学部4年。14年ユース五輪(南京)大陸別混合団体金メダル。16年リオ五輪はバックアッパー。18年から全日本選手権2連覇。母の孝枝さんもフェンシング選手で、エペで世界選手権などに出場した。170センチ、60キロ。血液型A。