スピードスケートの“虎の穴”が帯広市内に誕生した。日本スケート連盟がスピードスケートエリートアカデミーを始動させた。鵡川町(現むかわ町)出身で元山形中央高監督の椿央氏(55)がヘッドコーチに就任。連盟のバックアップを受けながら、将来のオリンピック(五輪)メダリスト育成を目指す。

スピードスケートエリートアカデミー入校式が12日、練習拠点となる帯広・北海道十勝オーバルで行われた。出席した椿ヘッドコーチは高らかに目標を宣言した。「札幌が立候補している2030年の冬季五輪に我々が育てた選手が活躍できれば」。そのために力を尽くす覚悟だ。

14年ソチ五輪でメダルを獲得できなかった。当時、日本連盟はナショナルチーム(NT)の組織など、いくつか強化策を打ち出した。その1つがエリートアカデミーだった。ついに実現する育成拠点。NTの練習を間近で見て吸収でき、NTの短距離部門を担当するタッカー・フレデリクスアシスタントコーチによるサポートも受けられ、国内最高の環境が整えられる。18年平昌五輪で高木菜那、美帆姉妹がメダル獲得など躍進したが、さらなる選手育成の基地となる。

高校生を対象に選ばれた選手のみ入校が可能。全国中学入賞を基準にしており、第1期生は飯田明音(15、さいたま土呂中出身)の1選手。中学2年だった昨年の全国で女子3000メートル4位に入った。競輪選手の父威文さん(49)と姉風音さん(19)、00年シドニー五輪自転車競技代表候補だった母香里さん(50)というアスリート一家で育った期待の星だ。「私の目標は将来五輪で金メダルを取ること」と掲げる。エリートアカデミーと提携する通信制の星槎国際帯広高に通い、規則で高校総体に出場できないが、オリジナルカリキュラムで勉学と競技の両立を目指す。

山形中央高で30年間指導した椿ヘッドコーチの腕の見せどころだ。10年バンクーバー五輪銅メダリストの加藤条治ら4人の教え子を五輪に送り出した。「選手たちの競技力だけではなく、人間力向上もできれば」と思い描いている。【保坂果那】

◆各競技のエリートアカデミー 日本オリンピック委員会(JOC)が08年4月、東京・味の素ナショナルトレーニングセンターを拠点に、有望な中高生を対象に始め、最初は卓球6人、レスリング5人で開校。09年からフェンシング、14年から水泳、ライフル射撃など続々と始まった。卓球の張本智和、平野美宇らが修了している。ラグビー、バレーボールなど協会、連盟独自で取り組んでいる事業もあり、ノルディックスキー複合も長野・白馬を拠点に設立の動きがある。