04年アテネ五輪柔道男子100キロ超級金メダルで、10月に男子日本代表監督に就任した鈴木桂治氏(41)が11月11日、日刊スポーツが運営する食育サイト「アスレシピ」のオンラインセミナーに出演する。「勝つためのメンタルと体づくり」をテーマに、現役時代の豪快なエピソードや、指導者として東京五輪で金メダルを量産した舞台裏の秘話などを語る。体が細かった学生時代の増量の苦労や、補食の大切さなどをセミナーに先立って聞いた。

-子どもの頃から体格は大きかったのですか。

鈴木さん 意外かもしれませんが、小6で160センチ、60キロぐらいでした。標準よりは大きかったですが、歴代の重量級に比べたら小さい方ですね。両親も大きくないですし、兄はガリガリです。自分も柔道をやってなければ、間違いなく細かったです。

-体を大きくしようと思った転機はいつですか。

鈴木さん 高校時代に「勝負が厳しい」と思うようになってからです。茨城県出身ですが、中学から(強豪の)国士舘へ進みました。成長期なのに体重が増えなくて、親に「太らない」「体重を増やしたい」とよく相談していました。当時、プロテインは高額で、さらに(記録的な冷夏による)米不足などもあって大変でした。親から「寝る前に餅を食べろ」と言われて、毎晩切り餅を6個食べていました。 

-増量で意識したことはありますか。

鈴木さん 今だと考えられないですが、欲望のままに食べていました。栄養計算もしないし、食べたいと思ったら食べる。その分、稽古もする。とにかく、空腹の時間がないようにしていました。

-食事で両親に感謝した出来事はありますか。

鈴木さん 3歳で柔道を始めて、小学生の頃は試合があると必ずお弁当でした。各家庭が重箱においなりさんなどを詰めて、毎回それが楽しみでした。友達とおかず交換などもして、柔道のただ苦しいだけでなく、そういったことを感じる機会でもありました。自分は、母が作った砂糖入りの甘い卵焼きが大好きでした。

-現役時代の補食を教えてください。

鈴木さん 大会でのメインは、おにぎり10個と甘い卵焼きですね。(4度制した)全日本選手権だと試合が朝から夜までなので、ガス欠だけはならないように意識していました。

-東京五輪までの9年間は男子日本代表の重量級コーチを務めていました。100キロ級で金メダルを獲得したウルフ・アロン選手は、五輪でどんな食事をしていましたか。

鈴木さん ウルフはおにぎりを20個以上を持って、1試合終わるごとに黙々と食べていました。試合以外の大半がもぐもぐタイムでした。決勝では109キロぐらいありましたし、前日計量からのリカバリーも彼の強さですね。

-近年の代表選手の食事への意識変化はありますか。

鈴木さん 選手は栄養学などを学び、自分が現役の頃に比べて意識や知識はとても高いです。ただ、意識が高すぎるがために心配なのが、「ご飯楽しい?」と思ってしまう瞬間があります。目的のために食べることも大事ですが、個人的に「食事=楽しい時間」だと考えます。エサではないですし、楽しい食事をすることで精神的な緊張もほぐれます。食事にはいろいろな作用があるので、代表監督として、そのあたりもうまく選手たちに伝えることが役目だと思っています。

 

◆セミナーのお知らせ

【柔道男子日本代表監督・鈴木桂治氏トークセミナー~「勝つためのメンタルと体づくり」】

11月11日(木)午後7時から開催します。スポーツアンカーとして活躍中のラクロスの元豪州代表・山田幸代さんが司会を務め、対談形式で深掘りします。柔道ファンはもちろん、「食」「カラダづくり」に悩みを持つ選手やジュニアアスリートの保護者、指導者も楽しめる内容です。参加費は500円。

応募方法など詳細は、https://athleterecipe.com/news/articles/202110110000430