ショートプログラム(SP)7位と出遅れていた鍵山優真(18=オリエンタルバイオ/星槎)が、大逆転優勝を果たした。

自己ベストを更新するフリー197・49点をたたき出して合計278・02点。SPの上位6人をごぼう抜きする演技で海外GP初参戦Vを成し遂げた。

今年3月に初出場で銀メダルを獲得した世界選手権(ストックホルム)フリーの190・81点を更新。ガッツポーズを重ね、キス・アンド・クライでも笑顔を見せたが「今日は立場とか成績とか肩から下ろして、一からの挑戦者の気持ちでした。優勝しようとか良い点数を出そうとかなく、特には気にしていなかった」と氷上で無心になり、真ん中に座ったメダリスト会見で「自分が1位になったことをさっき知って、すごくビックリしています」とようやく笑顔になった。

前日のSPは80・53点。こちらは自己ベストの100・96点より20点以上も低く、シニア転向後の国際大会では最低スコア。今回も首位と17・36点も離されていた。「昨日の演技が終わってから心の切り替えが難しくて…。国際試合でこんなにショートがボロボロだったことはなくて、どうやって立ち直ればいいんだろう」と思い悩んだ。切り替えると話していた朝になってもぬぐえなかったが、公式練習で吹っ切れた。

「昨日の夜ほど落ち込んではいなかったけど、朝も心の奥に不安がこびり付いていた感じ。公式練習までいろいろ考えていたんですけど、終わった後に父(正和コーチ)から『立場とか成績とか関係なく、練習してきたことを頑張るだけだぞ』と言われて。気が楽になりました」

すぐさま結果に表れた。冒頭の4回転サルコーから最後のトリプルアクセル(3回転半)までノーミスでそろえ、これ以上ないリベンジ。成功を目指す4回転ループへの挑戦はSPの低迷を受けて回避したが、昨季と同じ4回転2種3本でも、演技後半に4回転トーループを組み込んだ構成は昨季より攻めた。「ループは外して、できることを1つ1つ。後半の4回転トーループは少し緊張したんですけど(昨季と)ほぼ同じ構成で(自己ベストより)7点くらい上がったことはうれしい」と見事に立ち直った。

この大会を前に、フリー曲「グラディエーター」も改良。「音程をいじって、力強さが増すようなプログラムに変わりました。アドバイスしてくれた(振付師の)ローリー(・ニコル)さんに感謝したい」という調整も奏功した。目指す22年北京オリンピック(五輪)テスト大会のアジアンオープントロフィー(10月、中国)に続く国際大会2連勝にもなった。

迎える次戦はGPシリーズ第5戦フランス杯(19~21日、グルノーブル)だ。SPの悪夢が晴れて初のGPファイナル(12月、大阪)にも前進したが、この18歳は浮かれたりはしない。「1週しか空かないんですけど、できることはたくさんある。今回はショートの不安定さなどが目立ったので、フランス杯では今回のようにならないよう、できることを1つ1つ練習していって安定性を高めたい」と真のチャレンジャー精神を取り戻した。【木下淳】