札幌市は29日、招致を目指す2030年冬季オリンピック(五輪)・パラリンピックの大会概要案を公表した。開催経費を19年公表時から最大で全体の2割強に当たる900億円減らし、総額2800億~3000億円とした。

大会運営費2000億~2200億円は国際オリンピック委員会(IOC)の負担金やスポンサー収入などで賄い、原則税金は投入しない。施設整備費のうち400億~600億円としていた市負担は450億円に見直した。定例記者会見に出席した秋元克広市長は「多くの人々を魅了し輝き続ける持続可能な町づくりを進める礎のために、30年招致に向けた取り組みを進めていきたい」と話した。

72年大会で名ドラマを生んだ舞台は競技会場から外れた。ノルディックスキー・ジャンプと複合は大倉山ジャンプ競技場(ラージヒル)でのみの実施を計画。「日の丸飛行隊」が表彰台を独占したノーマルヒル会場の宮の森ジャンプ競技場(ノーマルヒル)は19年公表時には会場だったが、除外となった。大倉山の現在の観覧エリア部分に78億円でノーマルヒルを設置する予定。併設による維持費削減が見込めるという。秋元市長は「経費節約についてもデュアル化した方がメリットがある」と語った。

既存施設を活用し、19年に15カ所としていた競技会場数は13カ所に減らした。今回の案ではボブスレー、スケルトン、リュージュは98年長野五輪会場のスパイラル(長野市)を使用。将来的な費用負担を懸念する市民の声を反映し、大会のためだけの新設はしない。秋元市長は修正案によって「漠然とした不安はかなり払拭(ふっしょく)できるのでは」と、市民の開催支持獲得に自信を示した。【保坂果那】

◆日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長 持続可能な大会を開催して、人にも環境にも優しい街へリニューアルさせようという札幌市のビジョンに大変共感しています。

◆全日本スキー連盟の原田雅彦理事 札幌はウインタースポーツを継続的に続けている街。既存の施設でできますよ、ということは長い間かけて続けてきた歴史の証拠だと思う

<30年冬季五輪招致の経緯>

14年11月 上田文雄市長(当時)が26年大会の招致を表明

16年10月 市が26年大会の開催概要計画を発表

  11月 経費を4537億円と試算

18年 9月 北海道地震発生。市は国際オリンピック委員会(IOC)に招致断念を伝え、目標を30年大会に切り替え

19年 6月 26年大会がイタリアのミラノ・コルティナダンペッツォに決定

   7月 市が経費を3100億~3700億円に圧縮できるとの見通しを発表

  11月 20年東京五輪のマラソン・競歩が東京から札幌に移転決定

20年 1月 日本オリンピック委員会(JOC)が30年大会の国内候補地を札幌市に決定

21年 8月 東京五輪のマラソン・競歩を札幌で開催。閉幕後、秋元克広市長が開催概要計画を修正する意向示す

11月29日 札幌市が19年当時から開催経費を最大900億円削減し、2800億~3千億円とする修正案を公表