【モンペリエ(フランス)27日=松本航】フィギュアスケートの世界選手権で初優勝を飾った宇野昌磨(24=トヨタ自動車)がさらなる高難度ジャンプ構成への挑戦に意欲を見せた。前日26日のフリーは202・85点を記録し、合計は世界歴代3位の312・48点。ショートプログラム(SP)、フリー、合計の全てで自己最高を更新した。アイスダンスでは16位となった村元哉中(かな、29)、高橋大輔(36)組(関大KFSC)が現役続行にも含みを持たせつつ、今後について熟考する考えを示した。

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初優勝の歓喜から一夜明けても、宇野は穏やかな表情だった。エキシビション前にモンペリエの会場に姿を見せると「一番うれしかったのはステファン(・ランビエル)コーチたちが喜んでくれたこと」と心境を口にした。「日々頑張るのは自分のため。試合の時は周りの人のためと思っています」。その理想をかなえた初めての世界一だった。

これまで世界選手権、グランプリ(GP)ファイナルと2位が2度ずつあった。周囲には「シルバーコレクター」と呼ばれた。昨秋にはその思いを明かした。

「シルバーコレクターも悪い気はしない。2位という順位がいかに難しいかは、自分でも認知していた。ただ、順位じゃなく、自分の立ち位置が1位を争い続ける選手になったことがない。ちゃんとトップで争う選手になりたい」

最終滑走のフリー。あくまでランビエル・コーチが振り付けた「ボレロ」の完成を目指した。最終盤のステップで「思い切りやって、転んでもいい」と必死に滑った。レベルは最高の4。ジャッジ9人中6人が出来栄えで最高の5点をつけた。メダリスト会見では「今後やるプログラムも、これよりは楽だと思える」と口にするほど出し切った。その言葉を聞きランビエル・コーチが割って入った。

「昌磨、さらにステップアップするから楽になることはない。さらにハードワークするからこそ、新たなチャレンジが待っている」

フリー翌日、宇野の頭にも挑戦の2文字があった。「セカンドループに限らず、何か新しい挑戦をしたい。セカンドループはショート(SP)にも使える」。4回転につける3回転トーループをループにすれば、基礎点で0・70点の上積みが可能。フリーで代名詞の4回転フリップを2本組み込むなど、技術面も、表現面も新たな可能性をつかみにいく。「優勝がゴールじゃない。『ここからスタートするんだ』というのが心にある」。その言葉通り、今後も理想を追い求める。