日本(世界ランク10位)が大健闘した。

W杯最多タイ3度の優勝を誇るニュージーランド(NZ)代表「オールブラックス」(同4位)を終盤まで追い詰め、31-38。逃げ切られたが、王国を追い詰めた。

フッカー坂手淳史主将(埼玉)は「最後の最後、ちょっと届かなかった。悔しい」と口にし「みんなのディフェンス、アタックが切れなかった。あそこ(劣勢の前半途中)から一気にもっていかれることも(過去に)あったけれど、コネクションして、声をかけあってできた。そこは見せられた。次につながる」と胸を張った。

過去6戦全敗のラグビー王国に重圧をかけ続けた。前半33分で3-21のビハインドとなったが、簡単に主導権を手渡さなかった。

前半37分、自陣でボールを奪った流れで相手陣に侵入し、SO山沢拓也(埼玉)が地面のボールをドリブルしながらトライ。自らゴールを決めて11点差とした。さらに前半終了間際、CTBディラン・ライリー(埼玉)が左サイドを突破。内側にサポートしたSH流大(東京SG)へのパスが通り、最高の形でトライが生まれた。SO山沢のゴールも決まって17-21。ビハインドを4点に縮めて前半を折り返した。

後半は先手を奪われたが、11点追う16分にロックのワーナー・ディアンズ(BL東京)が相手キックをチャージ。そのままインゴールに飛び込むと、場内が大歓声に包まれた。途中出場したゲラード・ファンデンフィーファー(東京ベイ)がゴールを決めて4点差。相手ロックのブロディ・レタリックがレッドカードで退場するなど、歴史的勝利へ機運は高まったが、最後は振り切られた。

打倒NZへ、掲げたテーマは「ストリートファイト」だった。伝統的にタックルされながらつなぐオフロードパスなどを活用し、防御のほころびを一気に崩してくる相手。途中出場で初キャップをつかんだフランカー下川甲嗣(東京SG)は「待ったら負け。見たら負け。逃げられないし、絶対に戦わないといけない。先手を打つ。それがストリートファイトで一番大事」と言い切って臨んだ。

前半開始から素早い出足で「ストリートファイト」の言葉通り、ダブルタックルを重ねた。後半15分にはフランカー姫野和樹(トヨタ)が自陣ゴール前に得意のジャッカルを成功。右拳を振り下ろして吠えた。だが、金星はつかめなかった。

23年9月にはW杯フランス大会が開幕。日本は息つく間もなく欧州へ遠征し、11月12日にイングランド(世界ランク5位)、同20日にフランス(同2位)と戦う。ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチは「オールブラックスにしっかりとプレッシャーをかけて、自信をつけられた。イングランド、フランス。戦うのが楽しみ」と遠征を待ちわびた。世界を驚かすために、挑戦は続く。【松本航】