悲願をかなえる瞬間が、今年も見えてきた。古川学園(宮城)が熊本信愛女学院に3-0でストレート勝ち。2年連続で決勝に進出し、99年以来4度目の日本一に「王手」をかけた。

ドミニカ共和国出身の留学生で身長196センチのタピア・アロンドラ(3年)が両軍最多17得点の活躍。この日は3年ぶりの有観客開催となり、母ジュリサさんが応援に駆けつける中、勝利の原動力になった。国体に続き、本年度の「2冠」をかけた決勝は8日、誠英(山口)と対戦する。

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応援と観客が3年ぶりに帰ってきた冬の全国舞台。初めて体感する独特な雰囲気でも、最高到達点325センチを誇るアロンドラが自分の仕事を果たした。コートに立てば相手にプレッシャーを与え、チームメートも躍動。第2S終盤は3連続得点で勝利を引き寄せ、第3Sは一進一退の展開になったが、マッチポイントで阿部明音(3年)のスパイクが決まると、両腕を高く突き上げて喜んだ。

バレーが大好きだから、もっと上手になりたい-。その一心で頑張れることができた。13歳から競技を始め、岡崎典生監督(54)の言葉を受けて日本行きを意識したが、家族と離れて海をわたることに不安があった。それでも母ジュリサさんの一言で決心した。

「ママに『バレー、好きでしょ?』と言われて。『絶対に日本で伸びると思うよ! いい選手になるために行かなきゃ!』と言われて、考えて…。もっとうまくなれるように日本に行きますと言って来ました」

日本では、スポンジのように何でも吸収した。聞いた言葉をノートに5回書き、チームメートや友人に勉強を教えてもらい、今では日本語で流ちょうに会話ができる。普段の練習時間はドミニカと比べて長く、休日だった土日は練習や試合があるが「どんどんバレーがうまくなるために全部、好きになったから大丈夫」。3年間指導した岡崎監督も「アロンドラは間違いなくこの3年間で一番成長しました」と太鼓判を押す。

前日6日の試合後は「(母に)自分の子どもが一番良かったと思えるように、成長した姿を見せられるように頑張りたい」と意気込んだアロンドラ。8日、高校最後の試合を戦う。「苦しい時に全部、スパイクを決める。一番喜んで一番声をかけて、必ず日本一になれるように頑張りたい」。好きな言葉は「相思相愛」。苦楽をともにしたチームメートと歓喜の瞬間を分かち合う。【相沢孔志】

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