日本代表(世界ランク12位)がW杯メンバー発表前最後の一戦で敗れた。

フィジー(同10位)に12-35で完敗。前半7分に故障から復帰し、23年初代表戦となったフランカーのピーター・ラブスカフニ(34=クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)が危険なタックルで一発退場となった。

今後は数試合の出場停止となる見込みで、9月8日開幕のW杯フランス大会へ影響が懸念される。新戦力の台頭もありながら、1勝4敗だった5連戦。ゲーム主将のNO8姫野和樹(29=トヨタヴェルブリッツ)は前向きに抱負を述べ、15日のW杯メンバー33人発表後に欧州へ向かう。

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超満員の秩父宮に悲鳴が響いた。

前半7分。ラインアウトを起点とした中盤での防御で、ラブスカフニは素早く前に出た。左肩のタックルで仕留めかけた瞬間、相手のステップでとっさに出した右肩。当たったのは頭部だった。

ビデオ判定を経て、示されたレッドカード。股関節の手術から復帰した主将経験者を欠き、ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)は「キープレーヤーがいなくなり、厳しくなった」と漏らした。先月22日のサモア戦前半に退場したフランカーのリーチ・マイケル(東芝ブレイブルーパス東京)と同じ悲劇だった。

数的不利は相手の勢いを生んだ。

先発に21年東京五輪7人制金メダリスト4人が名を連ね、伝統的にスペースを生かした攻撃が得意のフィジー。0-14の前半38分には自陣ゴール前5メートルのスクラムとなり、ラブスカフニを欠いた日本はWTBナイカブラをFWに交ぜた。

勝負のスクラムは後退を余儀なくされ、アドバンテージを確認した上で相手SHクルボリがトライ。起点のスクラムの安定がかなわず、数的不利となるBKの攻防でも後手に回った。

それでも新戦力は躍動した。

W杯メンバー発表前最後のテストマッチ。後半8分には敵陣から自陣インゴールへ蹴られたボールをナイカブラが猛追した。自慢の速さで競り勝って失点の危機を救うと、同31分にトライで反撃ののろしを上げた。

同じく初のW杯を狙うCTB長田も終盤の独走で見せ場を作り、ジョセフHCは「最後までチーム精神を感じた」と力を込めた。

4年前のW杯日本大会は過去最高8強。昨年から標高8848メートルの世界一の山を例えに「エベレストを登る」と合言葉を掲げ、頂を目指してきた。

7月からの国内5連戦は1勝4敗。ラブスカフニは数試合の出場停止となる見込みで、W杯の戦略にも影響が出るとみられる。

プロップ稲垣は「ここで(気持ちが)落ちたらやってきたことを否定する」と前を向き、姫野がファンに対して言い切った。

「悔しい思いです。ただ、僕たちはW杯という高い山に向かって、まだまだ旅路の途中。結果を受け止め、絆を持って、修正してW杯に臨みたいと思います」

泣いても笑っても、残すは1カ月。今こそ、日本の絆を信じたい。【松本航】