ラグビーのリーグワン1部で2連覇を目指すクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(東京ベイ)に新加入したSH大嶌一平(28)が17日、オファーから1週間足らずで異例の実戦デビューを飾った。

三菱重工相模原ダイナボアーズとのプレシーズンマッチ(神奈川・小田原市城山陸上競技場)は40分×3本で行われ、3本目に出場。入団はこの日に発表されたばかりで、左手首に巻いたテーピングにBKのサインを記してプレーした。

43-19での勝利に貢献すると「開幕まで限られた時間しかない。よりみんなと密にコミュニケーションを取りたい」。東京サントリーサンゴリアスとの開幕戦(12月10日、秩父宮)で始まるシーズンを見据えた。

人生の転機は、いきなり訪れた。大嶌は18年から、この日対戦した相模原にプロ契約で在籍。だが、昨季限りで退団が決まった。現役への思いを捨てきれず、神奈川に妻と2歳7カ月の長女、1歳1カ月の次女を残して、単身で母校の名城大の学生寮に住み込んだ。

午後6時半からは学生たちをコーチングし、それ以外の時間帯は配達のアルバイト。家族は貯金を切り崩しての生活を余儀なくされ「11月30日がリーグワンの(登録)締め切りということで、そこまでは家族に『頑張らせてほしい』とお願いしていた」と振り返る。

昨季王者の東京ベイからは前週土曜日の11日、アルバイト中にオファーを受けた。SHに故障者が続いたことによる緊急の補強だった。家族に連絡を入れると、妻が泣いて喜んでくれた。すぐに13日の月曜日からチーム合流。名城大ではランニングや、壁に向かってのパスなど個人練習が大半で「ゲームフィットネスが足りていない。(強みの)テンポアップや、試合のコントロールを実践していきたい」と気を引き締めた。

大阪・常翔学園高から名城大に進み、浮き沈みを経験しながら得た日本一チームでのプレー機会。東京ベイは2連覇を目指すシーズンとなり、今度は早期のフィットとSH争いで存在感を示すことが求められる。

「まずは試合に出ることです。けが人(が出て)の補強という形にはなるのですが、いただいたチャンスをつかみたい。『サポートしに来た』というだけの選手になりたくない。入れてもらった以上はチームにいい影響を与えたいですし、エナジーをもたらせたり、恩返ししたい。名前を覚えることからですが、自分なりに模索して頑張りたい」

家族そろっての千葉での新生活に「もっと頑張れると思います」と言い切る。1度はどん底を味わった男とが、再び勝負のスタート地点に立った。【松本航】