強敵に逆襲する。Vリーグ1部(V1)女子のアランマーレ山形はV1初参戦の今季、レギュラーラウンド(RR)で22敗。RRでは「V1初勝利」を挙げることはできなかった。15年創部から指揮を執る北原勉監督(43)が、高き壁に挑んだ日々を振り返り、3月開幕のVカップに向けて、改善点や意気込みを語った。【取材・構成=相沢孔志】

 

昨季はV2初優勝を果たし、V・チャレンジマッチ(入れ替え戦)で姫路に2勝し、V1昇格権を手にしたアランマーレ山形。興奮が冷めない試合後、北原監督は「日本でバレーボールをやっている以上は、選手、スタッフ全員が絶対に1度は味わいたい舞台」と、悲願のV1について語っていた。

日本最高峰に挑んだ今季は「Challenger(チャレンジャー)」をスローガンに掲げた。毎年恒例の山形・蔵王合宿、サマーリーグを経て、23年10月にリーグが開幕。だが、高さ、パワーの個人能力で勝る相手に圧倒され、22試合中、フルセット負けがわずか1試合。セット(S)カウント0-3、1-3で敗れ、0勝22敗という厳しい結果に終わった。初参戦のRRを終えた指揮官は下を向かず、言い切った。

「数字で言えば、覚悟はしていた。いつも言う通り、勝敗に対する責任は監督が取るだけだと思うので、選手たちはやることをやってくれた。覚悟していたからダメではなく、やるべきことをやっていこうと決めていた。いろいろ得たことが多いので(結果は)気にしていない」

アランマーレの持ち味が発揮された試合がある。2月11日、RR最終戦のPFU戦。Sカウント1-2の第4S、18-24でマッチポイントとされ「敗戦濃厚」だったが、大卒ルーキー岡村南奈(23)のアタックなどで6連続得点。危機的状況から持ち込んだジュースの末に振り切られたものの、勝利への執念を感じた。

「個人能力は劣る部分があるかもしれないが、組織力で追いつけたのは、最後まであきらめないメンタリティー。スキルならサーブからのトータルディフェンスが見えた。選手たちをほめてあげたい」

個人では伊藤摩耶(27)がサーブ効果率でリーグ2位。チーム別ではサーブレシーブ成功率で一時2位となり、最終的には5位となった。北原監督は「アランマーレと言えばサーブ。(持ち味の)サーブからのトータルディフェンスで、伊藤が個人でランクインしたことは『通用する部分は通用する』という証拠、自信になった」と振り返った。

Vカップが本年度最後の試合になる。V1の12チームが2グループに分かれ、1回戦総当たりの予選ラウンドを戦い、各上位2チームがファイナルラウンドに臨む。3月9、10日は山形・鶴岡市でRR3位の久光、同1位のJTと対戦。RRの貴重な経験を生かし、ホームで躍動する。

「V1で勝つために、どういうことをさらに磨かなければいけないかが明確になった。特にサーブ&ブロックを重点に置き、今季を通してやっていきたい。アランマーレらしいバレーを展開し、会場の皆さんと元気よく戦いたい」

渇望する1勝をつかむ。

 

◆北原勉(きたはら・つとむ)1980年(昭55)6月11日生まれ、東京都あきる野市出身。東海大菅生-東海大。卒業後は青年海外協力隊として約2年間、エチオピアで指導。帰国後は日本オリンピック委員会に所属。JTコーチを経て、15年にアランマーレ山形監督就任。22-23シーズンはV2優勝監督賞を受賞。188センチ、100キロ。趣味は何事にもチャレンジすること。好物はすし。