<競泳:日本実業団大会山梨県予選会(短水路)>◇14日◇山梨・甲府

 現役復帰を決断した00年シドニー五輪競泳女子代表の萩原智子(29=山梨学院大職)が約5年ぶりに公式戦に出場した。14日、地元で行われた日本実業団大会山梨県予選会(甲府市、短水路)の50、100メートルの自由形2種目で、想定タイムを上回る好記録をたたき出した。昨秋から現役復帰に向け練習を開始。手応えを得て、12年ロンドン五輪出場への意欲を見せた。

 5年のブランクを感じさせなかった。100メートル自由形で50メートルの通過タイムが25秒97と掲示板に出ると観客席はどよめいた。上田春佳が今年2月に出した日本記録(53秒41)時の前半50メートルの26秒07を上回っていた。後半は疲れで失速したが5年前の自己記録と0秒54差の54秒49でゴール。「(試合前は)55秒ぐらいかと思った。自分でもいい泳ぎでビックリ」と笑顔だった。

 100メートルはラバー素材の未認可水着を使用したが、次の50メートルでは認可された水着に替えて25秒58。「日本記録は狙ってませんよ」と笑ったが「自分の記録(25秒28)は超えられると思った」と勝負欲も見せた。

 昨夏、取材に赴いた北京五輪で「取材者ではなくアスリートの感覚で見ていた」と現役復帰を決断。最初は現役時の心労を知る両親から反対された。だが06年に結婚した夫の佐藤一馬さん(36)は「やっとそういう気持ちになったか、と思った」と快諾してくれた。

 今年は8月の県予選に出場し、国体を目指す。そこから来年4月の日本選手権、そして12年ロンドン五輪を見据える。種目もこの日の2つに絞った。「やるからには日本代表になりたい」。

 この日の会場は99年に、今夏の世界水泳を中継するテレビ朝日プロデューサーの一馬さんに初めて取材された場所。思い出深い地でハギトモが再出発した。【広重竜太郎】