準強姦(ごうかん)容疑で逮捕、送検された柔道五輪金メダリスト内柴正人容疑者(33)が“勲章”を剥奪された。熊本県は8日、同容疑者に授与した2つの県民栄誉賞を取り消した。同賞に取り消し規定はなかったが、県は要項に新たに規定を設ける異例の措置で対処した。タレントのデヴィ夫人が自身のブログで同容疑者を擁護するコメントを掲載してネット上で話題になるなど、事件の波紋は広がり続けている。

 8日に記者会見した熊本県の蒲島郁夫知事は、落胆の表情を浮かべながら、内柴容疑者の県民栄誉賞の取り消しを発表した。「栄誉を著しく失墜させ、県民栄誉賞としてはふさわしくないと判断した」。同賞を取り消す規定はなかったが、内柴容疑者の逮捕という事態にいたってから、新たに規定を加えて対応した。

 内柴容疑者は、04年アテネ五輪と08年北京五輪の2大会連続で金メダル。アテネ五輪後に県民栄誉賞、連覇した北京五輪後には新設された県民栄誉賞の「特別賞」を贈られた。ところが今回、九州看護福祉大(同県)で女子柔道部のコーチを務めていながら、部員に飲酒させ、セクハラ行為をしたとして懲戒解雇された上、準強姦容疑で逮捕された。郷土の誇りとしてたたえられた“英雄”が引き起こした不祥事に、知事は「教え子に飲酒させ関係を結んだことは本人も認めており、教育者としてあるまじき行為だ」と批判した。

 知事は、受賞を記念して県庁敷地内に植樹した際に設置した名前入りの2つの標石も近く撤去すると発表した。内柴容疑者は08年に出身地の同県合志市でも名誉市民の称号を受けている。同市はこれを取り消す議案を開会中の定例市議会に提案する方針だ。

 事件は思わぬ方向に広がり始めた。大胆発言で人気のデヴィ夫人が、自身のブログに内柴容疑者の擁護発言を掲載し、ネット上で論議が起こっている。逮捕当日6日の更新分で「なぜ逮捕する?

 私は彼の味方をする」と題した長文を掲載。「日本の英雄である内柴選手が強姦行為に及んだとは思えない」と持論を展開した。「すべてが想像ですが」と前置きした上で、「女性の話だけをうのみにしてよいのでしょうか」「彼に気を許していた、彼をその気にさせる振りがあった、そのように思えてなりません」ともつづっている。ブログには賛同のコメントが掲載される一方、別のネット掲示板には批判が相次ぐなど物議を醸している。

 内柴容疑者はこの日、東京・原宿署から送検された。