【スバ(フィジー)11日=松本航】ラグビー日本代表フランカーのリーチ・マイケル主将(30=東芝)が、9月20日に開幕するワールドカップ(W杯)日本大会へエネルギーを充電した。

4年ぶり3度目の優勝を決めたパシフィック・ネーションズ杯(PNC)米国戦から一夜明け、会場のスバから車で約3時間かかるビチレブ島北部タブアを訪問。日本へ戻った本隊と別行動を選び、18日集合の北海道・網走合宿に向けた休養日を活用した。

日本から同行した妻と娘を乗せたリーチの車が、小川の手前で止まった。小さなタブアの町から砂利道を進み、約20分。母イバさん(59)の故郷が近づくと、軽やかな足取りで川を越えた。「こっちに来ると自然体でリフレッシュできる。ラグビーは完全に忘れる」。坂を登上り切って見えた集落には、イバさん、父コリンさん(62)、おじ、おばら約50人が一堂に会した。コショウ科の木の根を粉末にし、水で溶いたフィジー伝統の「カバ」をグイッと飲み干すと、前夜の鋭いまなざしは一変していた。

ごちそうは周辺で採取されたパイナップルにタロイモの葉。ニュージーランド(NZ)生まれのリーチだが、幼少期も2~3年に1度は母の故郷を訪れた。2年前からは父コリンさんが移住し、家を建てる技術をこの地で伝授。イバさんもNZから前夜の試合に駆けつけ家族がそろった。リーチは周囲のエールに何度もうなずき「お父さんが(80年に)ここに来なかったら、お母さんと出会っていない」と原点に立ち返った。

最後は別れの歌で見送られ、表情はまた引き締まった。「日本のラグビーは間違いなく強くなっている。勝つ準備がかなり良くなった」。PNC3戦全勝で、世界ランクは過去最高タイの9位になることが決まった。「PNCを振り返って確認し、いいスタートが切れるように準備したい」。W杯まで残すは39日。全身で吸収したエネルギーを、仕上げの段階につぎ込む。