<東京6大学野球:慶大6-4早大>◇5月31日◇最終週最終日◇神宮

 巨人、中日に所属した就任1季目の江藤省三監督(68)率いる慶大が早大を破り、11季ぶり32度目の優勝を飾った。元プロ監督の優勝は60年春の法大・服部力氏以来100季ぶり。6回に代打の伊場竜太内野手(2年=慶応)が中前適時打を放つなど采配も的中した。早慶決戦を制し、全日本大学野球選手権(8日開幕、神宮ほか)に出場する。早大・斎藤佑樹投手(4年=早実)は、リーグ戦最短の3回2失点(自責1)で降板。早大史上初の投手兼主将の春制覇を逃した。

 江藤監督が就任時に思い描いたシーンが、わずか半年後に現実となった。09年12月に始動した際「佑ちゃん(斎藤)が早大にいる間にたたいて優勝したいね」と話した。その通りの優勝決定だ。「最高。もういいようがない。ホント、最高です」。涙で声が詰まる。3度宙に舞うと、また涙を流した。

 采配がドンピシャで決まった。2点差とされた直後の6回、2死一、二塁で伊場を代打に指名すると、中前適時打。失策も出て一気に2点を加えた。「最近、状態がいい選手。大学はプロと違って今、いい人を使う」。その伊場は「体が反応しました」と今季3本目の安打を喜んだ。前日までの打順も組み替えた。今季無安打の竹内一真外野手(4年=慶応)を6番に抜てきすると、斎藤からの先制打を含めて3安打。「高校で(斎藤から)本塁打を打ったことがあるんです。苦手意識はなかった」と振り返った。

 逆王手をかけられた流れを止めようと、江藤監督は雰囲気づくりにまで配慮した。試合前のシートノックでは就任後初めて自らバットを握った。外野ノックこそ学生コーチに譲ったが、68歳の打つ球に選手が燃えないわけはなかった。球場入りは「新調スーツ」だった。出発前、テレビの占いコーナーで見たラッキーアイテム。選手を前に「占いで、新調のスーツがいいといっていたから」とわざわざこの話を披露して笑わせた。

 「バットがスムーズに出ていた。動きも一番よかったなあ」。ドラフト候補3投手を攻略した打線に初めて及第点を与えた。1週間後、全日本大学選手権が控える。「日本一にならんと6大学の値打ちはない。日本一です」。リーグ制覇から1時間もたたないうちに目標を切り替えた。【米谷輝昭】