<都市対抗野球:東芝2-0JR九州>◇7日◇決勝◇東京ドーム

 東芝(川崎市)がJR九州(北九州市)を破り、3年ぶり7度目の優勝を飾った。元南海で76年に新人王に輝いた藤田学氏(55)を父に持つ藤田卓史投手(27=九州共立大)が、3安打に抑え、二塁も踏ませない無四球完封を決めた。6月に結婚したばかりの新婚右腕が、大会MVPに当たる橋戸賞を受賞した。

 東芝カラーの赤に染まったスタンドからわき起こる「フ・ジ・タ」コールがやまない。入社6年目の藤田が、日本一を決める大舞台で3安打完封を成し遂げた。右横手投げから140キロ前後の直球を内外角に投げ分け、無四球3奪三振。「気持ちを込めた。こんな舞台で投げられて幸せ」とほおを緩ませる。二塁を踏ませず、最優秀選手に値する橋戸賞も獲得した。

 投手陣の柱となったのは今年からだ。昨年まで1度も東京ドームのマウンドに立てず、前回8強で敗退した後は「どうして自分を使ってくれないんですか」と印出監督に直訴。プロ野球の南海で投手として活躍した父学からは常々「一生懸命やっていればいいことがある」と言われてきた。自分を追い込み、苦労を重ねた藤田は、今年6月に結婚。妻由香さん(28)が見守る中、最高の舞台で努力を実らせた。

 07年の優勝時は、ベテランや他チームからの補強選手の力に頼っていた。しかし今回は若手が中心。初回に先制点を挙げた藤原将太内野手(24=亜大)や3安打の安達了一内野手(22=上武大)ら後輩に援護され、再び日本一に駆け上がった。「自信がついた。またここで投げたい」と話す藤田の目には、すでに来年の頂点も見えているのかもしれない。【鎌田良美】