若大将と怪物の交差点-。プロ2年目の16年オフ。岡本和がプエルトリコのウインターリーグに参戦した。中南米に浮かぶ島国での武者修行。超高校級でプロの扉をたたいたドラフト1位だったが、プロの壁が立ちはだかった。思い描いた結果からは、ほど遠い現実を受け入れる毎日だった。そんな若武者にとって将来を照らす分岐点がプエルトリコでの経験だったのかもしれない。

「そんなに野球を難しく考えるな。ただでさえ、野球は難しい。だから、シンプルに考えればいい」

現地でチームメートに言われた。「なんかすっきりした。そうだなと。なかなか説明はできないんですけどね」。真意は-。あれから5年が経過した今、体現している。球界を代表するスラッガーに成長し、巨人の絶対的な4番に君臨する。

同時に奇跡的な出会いも脳裏に焼き付く。現地で同じチームでプレーした当時ソフトバンクの松坂は「野球を楽しくするためにここにいる。もう1回、野球の楽しさを味わいたい」とウインターリーグ参戦の理由を明かした。かつて、大リーグのレッドソックスでエース級の地位を築いた大投手がメジャーを目指す若武者と一緒に汗を流した。若手に多くを語ることはない。だが、その存在はチームメートに絶対的な影響力を与えたことは言うまでもない。

「松坂さんから勉強させてもらったことはたくさんありますよ。野球の原点じゃないですか。大事なことを再確認させていただいた」

楽しいから野球をする、ではない。野球が好きだから楽しみたい。一時代を築いた平成の怪物が幕を下ろした。先人から授かった“想い”を打席、グラウンドで見せ続ける使命は今も、この先も忘れない。【巨人担当=為田聡史】