敦賀気比(福井)は平沼翔太投手(3年)の1安打10奪三振完封で、奈良大付に勝利した。

 本気を出したのは最後の1球だけだった。敦賀気比の大黒柱、平沼は完封を決めた100球目に、この日の最速142キロをマークした。「最後にちょっと力を入れた。140キロが出たので次につながります」。わずか1安打無四球投球のヒーローは、お立ち台で淡々と振り返った。

 5回2死までパーフェクト。失策で初めて走者を背負い、6回1死では初安打を許したが、慌てなかった。キレのいい直球とスライダー、カーブ、チェンジアップを駆使。8回まで毎回の10三振を奪った。前日22日に東哲平監督(34)からアドバイスを受け「自分の投球をすることだけを心がけた」。序盤は外角中心の配球。相手打線が踏み込んできたとみると「内角を有効に使った」と配球を変えた。

 巨人、阪神で活躍した小林繁氏(享年57)も認めた。同氏が引退後に福井のヤングリーグ「オールスター福井」を指導していたが最後の教え子に平沼がいて「必ずプロの世界に行く投手」と語っていたという。大きく成長した最速144キロ右腕が「本気モード」に入っていく。【浦田由紀夫】

 ◆甲子園データ 敦賀気比・平沼が惜しくもノーヒットノーランを逃した。9番高橋に被安打1。センバツ史上、9番打者の1安打でノーヒットノーランを逃したのは、60年吉田(松阪商)が志岐(柳川商)の右前打、84年水沢(金足農)が木村(新津)の左前打でフイにしたのに次いで3度目と珍しい。無四死球、被安打1ながら準完全試合(許した走者1人だけの完封試合)ではない。失策による走者が2人いた。四死球を何個出してもよいノーヒットノーランより準完全試合の方が難しい。センバツの準完全は91年和田(大阪桐蔭)92年吉田(東海大相模)の2人だけしか達成しておらず、失策の走者はもったいなかった。