地元に恩返しや。第97回全国高校野球選手権大会(6日開幕、甲子園)の組み合わせ抽選会が行われ、大阪偕星学園は大会第3日第3試合で比叡山(滋賀)と初戦を戦うことが決まった。春夏初の出場を記念し、右袖に学校所在地の大阪市生野区の区名を入れたユニホームを作ることが明らかに。やんちゃな軍団を見守る地元への感謝を「IKUNO」の文字に込める。

 俺たちは大阪、そして生野区の代表だ。7月31日の大阪制覇から大急ぎで作り始めた甲子園限定の新ユニホームには、地元への感謝が盛り込まれていた。

 右袖に「IKUNO」の5文字。「K」の胸文字を「大阪偕星」に変え、さらに生野区の名前を入れた。区名は異例だが、太田明弘理事長(61)は「地元に愛される学校を目指してきましたので」と説明した。

 志望校受験に失敗したり、スポーツのクラブ活動でも挫折した生徒を受け入れてきた。学校に隣接する寮を脱走する生徒もいた。学校の行き帰りにゴミをほったらかしにする行儀の悪さも辛抱強く指導。この日、チームで生野区役所を表敬訪問した際、山本皙監督(47)は「いつもご迷惑をおかけしまして」とまず、清野善剛区長らに頭を下げた。やんちゃな軍団の“更正過程”に地元の協力は不可欠だった。

 今は商店街などの夏祭りに生徒が出向き、みこしをかついで祭りを盛り上げる。大阪初制覇を喜んでくれたのは地元。太田理事長は新ユニホームの構想を清野区長らに伝えた。

 初戦相手は比叡山。練習試合の経験もなく、山本監督は「相手は伝統校。しっかり情報を集めます」と気を引き締めた。抽選会終了後には、倉敷(岡山)監督時代から親交のある智弁和歌山・高嶋仁監督(69)に「監督の執念が実ったね」と初出場を祝福された。大阪大会決勝で左手親指のマメをつぶしたエース光田悠哉(3年)もキャッチボールを再開。エース復調、新ユニホームと追い風を受け、初陣校が甲子園に飛び出す。【堀まどか】